エッセイ「家族の食卓」

(無料イラスト集から転載 http://toki.at.webry.info/200903/article_9.html)
家族の食卓
俺の家族は嫁はんとと中学3年生の双子の4人。嫁はんにはお義姉さんと義弟がいて、お義姉さんの家族も義兄さんと教師をしているめぐちゃん、今年社会人になったよしくんの4人、義弟の家族も同じく、奥さんと今年小学3年生になったみっちゃん、小学校1年生のさとくんの4人や。
誕生祝いは、それぞれの誕生日にみんなが実家に集まることは難しいから、誕生日の近い者を2、3人取りまとめ、土曜か日曜日の適当な日に集まって祝う。
食事はご両親にあまり負担をかけないようみんなで持ち寄ることにしてる。俺も3、4品作る。
季節によりメニューはあれこれ変わるが、定番メニューが2つある。紹介しよう。
1品目。フランスパンを横2つに切り、中身をくりぬく。くりぬいたパン屑をクリームチーズと混ぜ合わせ2つに分ける。その分けた一方にツナとハム、みじん切りにしたパセリを混ぜ合わせ、もう一方には果物のミックス缶詰を汁気を切って混ぜ合わせる。これを2つ切りにしたフランスパンの各々にそれぞれ詰め直して冷凍するんや。
食べるときはシャーベット状になるまで解凍し、1センチ程度の幅の輪切りにして大皿に並べる。パセリの緑に映えたパンの断面と、色とりどりに鮮やかなフルーツ色の断面が食卓を際立たせるという寸法や。噛むとシャリッと音がするから、名づけて「シャリパン」
2品目は名づけて「じゃがぴら」。
まずジャガイモを千切りにする。細ければ細いほどいい。いかに細く切るかがこの料理のポイントの1つなんや。その千切りにしたじゃがいもを水にさらしてからしっかり水気を切り、フライパンで手早く炒め、酒と醤油を適量振りかけてさらに手早く炒める。この間、約30秒。火を止めたら白ゴマを振って手早くからめて出来上がり。これだけの料理や。
しかしこれがなかなか難しい。じゃがぴらはじゃがいものシャキシャキ感が命やから、炒め過ぎてはいけないしベトついてもいけない。その頃合いが難しいんや。
俺もこのじゃがぴら作りにはかなり回数を重ねてきたが、歯ざわりのいい納得のいくじゃがぴらは、4、5回に1回くらいしか作れない。火を通しすぎてしまったり、酒と醤油の量に難があってベトついてしまうんやな。せやから口の中でシャキシャキ音がするようなそんなじゃがぴらを作ることができたときはなんとも嬉しい。
シャリパンは子らに、じゃがぴらはお義母さんやお義父さんに人気の高い俺の得意中の得意料理なんや。
この他、巻き寿し、いなり寿し、鯖のきずし、柿の葉寿司、揚げ物、煮物、季節に応じた刺身各種等々、あれこれ作る。
料理では俺がでしゃばるので嫁はんは控えめやが、その嫁はんにも定番料理がある。
フランスパンを薄い輪切りにして、擦ったにんにくとクリームチーズを混ぜ合わせて輪切りのパンに薄く塗って焼く。その上にマッシュ状に潰した茹でたまごを軽く載せて、半切りにしたミニトマト、輪切りのキュウリ、小さく切ったバナナなどをあしらうんや。
カリカリのフランスパンが香ばしく、名づけて「カリパン」。色目もよくオードブルの1品としてみんなに人気がある。
お義姉さんはサンドイッチ専門なんや。タマゴサンド、ツナサンド、ミックスサンド、ポテトサンド等々、いつも大皿にてんこ盛りや。
お義母さんは、赤飯とかかやくご飯などのご飯物、小芋の煮っ転がしや炒め物、サラダ各種等々「おふくろの味」担当。
義弟夫妻は共働きの上に子どもがまだ小さいから、料理を持ち寄ることは免除されていて、その代わりケーキと果物の担当。
こうして持ち寄った料理を大皿に盛り、食台の上に並べると中々に壮観やで。
さて、食卓や。10数年前にお義父さんが脳溢血で倒れ、今はリハビリの身であまり体の自由がきかへんから、畳敷きの部屋の襖際に4脚椅子を置いて座る。そして、その前にテーブル2卓を長方形に合わせて並べ、その回りにお義父さんを囲むようにしてみんなが座るのんや。
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(無料イラスト集から転載 http://www.kyowasoft.com/lgif_IK02/V0205.gif)
「これ、すごい! 手がこんでんなぁ。美味しいわぁ」
「お義兄さん、どうやってこんな料理作ったん?」
「これ、変わった味やわぁ 美味しい! 食べてみて」
俺はそれらの褒め言葉に口には出さないながらも、エッヘン、得意満面や。
「いやあ、お義母さんの料理はやっぱりおいしいですねぇ」
「このサンドイッチ、変わった味やけどなかなかいける」
みんなをみんなが持ち上げて、総勢14がわいわいがやがや。あれを食べ、これをつつき、義弟夫妻が走り回る子どもを叱りつけ、思い思いに好きなことをおしゃべりして、にぎやかでかつ楽しい食卓の時間が続く。
俺にとって残念なことは、この食事会にビールが出ないことや。お義父さんの脳溢血の一因が飲酒にもあったことから、実家では酒は出さない決まりになってる。これは致し方ない。
食事が終わるとゲームの時間や。ここからはお義兄さんの独壇場。お義兄さんは養護学校の先生で、ゲームの小道具を一杯もっていて、自身もおもちゃ作りが大好きときてる。これら小道具を駆使して、子らを中心に家族みんなが相よってゲームを楽しむんや。
![p1010006[1]](https://blog-imgs-26-origin.fc2.com/a/j/i/ajiwai25/20110809155708dbb.jpg)
連想ゲーム、歌謡大会、トランプゲーム、手品、ビンゴゲーム、これら一般に行われているゲームに1ひねり、2ひねり加えたゲームが登場し、爆笑に次ぐ爆笑。皆が腹を抱えて笑い転げ大いに盛り上がる。
ゲームが終われば、子どもの大好きなケーキの時間や。甘さを抑えた上品な味わいが身上の有名なケーキ屋さんが実家の近くにあって、少々値段は張るんやが、誕生日祝いともなれば義弟が大きなイチゴケーキを大奮発。
室内の電気を消して、皆でバースデーソングを歌う。子らがロウソクを吹き消して、お義母さんがケーキを切り分け、特に大きいのを舌なめずりしている子らの前に置いてやる。お義姉さんが子らにはジュースを、大人にはコーヒーをいれる。職場のこと、学校のこと、友達のこと、社会のこと、あれやこれやの話題が花盛りに飛び交うケーキタイムの始まりや。
ケーキタイムが終わればゲームの再開。またまたお義兄さんの出番や。子らが走り回る中、罰ゲームでお義母さん、お義父さんが仲良く、昔懐かしい美空ひばりの歌を歌えば、俺たちの双子の子らが最近はやりの、俺にはちんぷんかんぷんのロック調の歌を歌う。今年小学2年生になったみっちゃんは恥ずかしがって歌おうとしないが、さとくんは小学校で覚えた「ぞうさん」などの歌を懸命に歌って、これにみんなが和する。
そうこうするうち夕暮れがきて、午後1時あたりから始まったこの食事会もお開きの時間となる。お義父さんから締めの言葉が出て、いつものようにみなして記念写真を撮る。
残った料理はお義母さんが各々の家庭毎にタッパーに入れてくれる。家に帰ればこれらの料理が夕食に、俺の場合はビールの当てに早変わりするという寸法や。
こんな食事会が始まってもう10年以上が過ぎた。嫁はんのご両親も高齢となり、子らも成長していき、これからそれぞれの家庭に紆余曲折があることやろが、これからもこの食事会を絶やすことなく、家族みんなして楽しく食卓を囲みたいものやとしみじみ思う。
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