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阪急富田駅近く「もりたまYA!」 - 最近のトピックスや弁当作り・断酒生活そのほかもろもろ日記

阪急富田駅近く「もりたまYA!」

     もりたま屋玄関

     もりたま屋看板
           

           阪急富田駅近く「もりたまYA!」

 阪急富田駅を降りて地下改札を出、京都方面に向かって左の階段を上がった路地を左手に曲がれば、その路地を挟んで、餃子の「王将」、居酒屋「長助」、そば処「尾形」、立ち呑み「膳」と並んでるが、それらの店と駐輪場や民家を隔てたその向こうに、焼き鳥「くし太」と並んで「もりたまYA」はある。

 もりたまYAは横一列に8人が座ることのできるカウンターと、その奥に4人がけのテーブルを備えた、どちらかというと若者向けのパブ風居酒屋で、たまちゃんはその店の経営者兼シェフ兼ウェイター兼レジ係なんや。要するにもりたまYAはたまちゃん1人が経営する店やねん。

  もりたま屋店内風景
 (店内風景)
 
 たまちゃんは男気があってとにかくステキや。いかにも頑健なガタイをしていて、いつも元気、元気。何でもかんでもガハハッと笑い飛ばす。

 こんな風や。

「カジキのグリルコチュジャンネギソースってどんなん?」

「そりゃあ、読んで字の如くよ。カジキをグリルしてネギとコチュジャンで和えたのよ。こりゃあ、辛いよ。ガハハッ」

「たまちゃん、そのカジキ、どこで釣ってきたん?」

「それはいえんわ、密漁やから。ガハハッ」

「カジキってどこらあたりで釣れるんやろ?」

「そりゃあ、水族館では釣れへんわな。ガハハッ」

 たまちゃんの客に対する配慮はすばらしい。何年前になるやろ、俺がこの店に初めて入ったとき、テーブルに備え付けられたアンケート用紙に名前入りで答えて、帰り際にたまちゃんに渡したことがある。それから2ヵ月あまり経ったある日、もりたまYAに入ると、なんと俺の顔を見るなりたまちゃんがこういうやないか。

「あっ! 浪花太郎さん、お久しぶり」

 2ヶ月も前に一見で入ってきた客の顔を、名前ともども覚えているというのは並の芸当やない。

 あのときもそうやった。俺から少し離れて座っている妙齢のベッピンさんが、ほっけの塩焼きを注文したので、俺はその女性に話しかけたい思いも手伝うて、たまちゃんに「ほっけって、ほっけの太鼓と関係があるんやろか?」と尋ねると、たまちゃんは「え、なんやのん、ほっけの太鼓って。そんなん知らんわ」と言った。

 その答えに俺は話の接ぎ穂を失うてしもて、それ以上、かのベッピンさんと何の会話もできなかったんは残念なことやったが、俺はそのことをすっかり忘れていたのに、後日、もりたまYAに行くと、たまちゃんがこう言うやないか。

「太郎さん、ほっけの太鼓のこと、分かったよ。ほっけはほっけでもほっけ違い。ほっけの太鼓のほっけは、法に華と書いてほっけと読む、縁起のいい仏教用語やて」

 俺が何気のういったその言葉を忘れずに調べてくれていたんやな。これまた、なかなかできる芸当やない。

「進化する店 創作酒菜」と銘打つとおり、たまちゃんの料理は独創的ですばらしい。食材の使い方が大胆で男っぽい癖に、味はすこぶる繊細なんや。カウンターの正面の白板に、たまちゃんの作る今日の料理が掲げられているんやが、いずれの料理も独創的で、その上うまい。

 イカとアボカドと山芋と甘海老を明太子で和えて大葉の上に載せ、細切り海苔を散らした「海の幸と山の幸の明太子和え」なんか、なんともいえずうまかった。

「和バラと白菜の甘味噌なべ」は、味噌の甘味に豚肉と白菜がうまくマッチングしてて、やがて訪れる冬の気配が感じられ、具材を食べた後の雑炊も、いかにもほくほくうまかった。

「カジキのグリルコチュジャンネギソース」は俺には辛すぎたが、それはカレーの辛さを除いて辛さが苦手な俺の選定ミスで、たまちゃんに責任はない。きっと辛味好きにはこたえられない一品に違いあらへん。

 たまちゃんはとにかく勤勉や。木曜日が定休日であることを知らず、仕方のう隣の焼き鳥屋「くし太」に入ったとき、内藤剛一をにやけさせたような軟弱そうなな店主が「お隣の店主はホントにきっちりしてはりますよ。この2年間を見てるに、時間には間違いなく開店しはるし、木曜日以外は正月も休みなく店を開けてはるんやから、ホント、感心します。それに男気があって、それが女性客にはたまらない魅力のようですわ。私も見習わないといけません」そう俺に言ったもんやった。

 まったく何をとってもたまちゃんはすばらしい。

 もしこの俺が、もっと若くて魅力のある女性だったなら、迷わずたまちゃんの押しかけ女房になるところやが、残念ながらそれは叶わない。

 え、それはなぜかって? なぜならそれは、たまちゃんは男気はあるけど女シェフなんやから。

      もりたま屋
     (たまちゃんその人)

 大人になってからスカートを1度も履いたことがないくらい男っぽいくせに「女に歳なんか聞くもんやないわよ」て言うから、たまちゃんの歳は正確にはわからないが、41、2歳といったところか。

 たまちゃんの経歴は一風変わってる。高校を卒業後、パン職人の道に進み、数年後、思い立って大工さんになった。大工さんといっても街中に家を立てるあの大工さんやない。避暑地のバンガローを専門とする大工さんや。バンガロー作りの間は、荒くれ男どもと起居を共にしたということやが、その男どもとの間に1度の過ちもなかったというんやから、その気丈さが知れる。

 バブルが弾けて世間の不景気風の中で、バンガロー作りは一挙に斜陽産業と化して、たまちゃんはそれからしばらくあれこれのアルバイトで糊口を凌いだらしい。いつやったか、そのアルバイトのひとつ、測量助手を務めたときの話を聞かせてくれたことがあった。

 測量は2人1対で行動し、どこかの測点に赤白まだらの測量棒を持って助手が立ち、それを測量士が機器を用いて測量するという作業が多いんやが、その測量士が70歳手前の年配の人で、たまちゃんが測点に立ってると、さかんに「こら、しっかり棒を持っとかんか!」と怒鳴るんで、硬直したままよく見ると、揺れているのは測量士の手元の方だったとか、測量地点への移動はオンボロ車でウィンカーもワイパーも利かず、大雨の日には窓から手を出したり、後続車にウインクしたりして、右折、左折の合図をし、車内でもびしょ濡れになったとか、そんな話を
放胆な物言いでおもしろおかしく聞かせてくれたものやった。

 けど、俺のこれまでの書き様からすると、たまちゃんはまったく女っ気のない男勝りのシェフのように思われるかも知れへんが、それは俺の筆の誇張というもので、実はそうやない。

 リリーフランキーの「東京タワー」に感動して、そのことをたまちゃんに話したときのことを思い出す。俺はあまり本を読まないが、東京タワーだけはなぜか気になって本屋の店頭に野積みされている本を買って読み、泣きに泣いた。

 死んでしまった「オカン」の唇にキスし、何百度だかの炎に焼き尽くされた灰の中から拾い上げたオカンの骨片を口に食み、東京タワーに上ってオカンの遺骨に語りかける主人公の姿に、俺は俺のおふくろへの想いを重ね合わせて泣いたんやった。

 翌日、もりたまYAに行き、そのことをたまちゃんに話してると、またその感動が蘇ってきて、俺は恥ずかしながら、こらえ切れずにたまちゃんの前でまた泣いた。その俺の涙を見ながら、たまちゃんは俺に何気なくこう言ったのである。

「私も夕べ、あることで部屋に隠れて大泣きに泣いたわよ」

 俺はそのとき、その物言いの中に、たまちゃんの“女”を見た気がした。1人身で生きていこうとすることへの両親との葛藤のせいか、はたまた他の理由があったのか、俺には知る由もないが、この世間の荒波の中に女1人立ち尽くし、男っぽく大きく構えようとするその奥底に隠された、たよやかで優しい女としてのたまちゃんの姿を、このとき、俺は確かに見た気がしたのである。

 ときはまだ十二分にある。たまちゃんの心の中に眠りこけている“女”に、鮮やかな華が咲く日の来ることを俺は信じたい。

 たまちゃんの作ってくれた創作料理で、印象に残っている数品をここに上げておこう。

☆ 牛スジとコンニャクのニンニク炒め

 コンニャクをさいころ様の角切りにして素揚げにし、牛スジは茹でて脂を抜く。これを合わせて薄切りにしたニンニクで揉んでゴマ油で炒める。味付けはにんにく醤油。小口切りのネギとゴマを散らして出来上がり。
まあ、変わり土手焼きといったところやな。

☆ 茹でイカとコンニャク麺(コンニャクと寒天を合わせた麺)のイカ墨和え。

 この料理の調理法については説明の必要はないやろ。まさに名称のままや。まっ黒でちょっと生臭かったが旨かった。これってイカ墨スパゲティーからの発想かな?

☆ 豚ガツのスタミナみそ炒め。

 俺はそれまで知らなかったんやが、豚ガツとは豚の胃袋で、コリコリした食感がある。豚ガツ、ピーマン、シイタケを炒めて、赤味噌とコチュジャンで味付けしゴマをふって出来上がり。豚ガツのコリコリ感と赤味噌とコチュジャンの合わせがマッチングした一品で旨かった。

☆ 豚シャブトロ和え

 なめこ、たたいて崩した小芋、オクラを合わせて豚シャブの上にかけ、おろししょうがとゴマを散らした麺つゆにつけて食べる。
 なめことおくらのネバネバ感が豚シャブに合うというのは、俺にとっては新発見やった。

☆ チーズ豆腐とトマトのカプレーゼ

 チーズトーフ、トマト、アボガドを薄く切って交互に並べ合わせ、小口切りのあさつきを散らしドレッシングを回しかけたシンプルな一品。

 たまちゃん「このトーフ、チーズ豆腐いうねん。とろっとしておいしいなあ思て使うてみてん。それに豆腐にトマトとアボガドいう取り合わせも、なんとのうおもろいやろ。名づけて「チーズ豆腐とトマトのカブルーゼ」。ガハハ」

 俺 「へえ~。変わってんなあ。 それってかぶりつけいう意味かいな?」

 たまちゃん 「カッパさんはカプレーゼも知れへんの? ホンマにうちのお客さんは教養がのうて困るわ。これでも私、昔はフランス料理、習てたんよ。嘘やけど。ガハハッ」

☆ エビとアボガドのグラタン

 アボガドを半分に切って中身をくり出し、バターで炒めた海老とホワイトソースとアボガドの身を混ぜ合わせて、お椀代わりにしたアボガドの皮に詰めなおし、粉チーズを振ってオーブンで焼いて出来上がり。
アボガドと海老は、これがまた相性がいいんや。

☆ さんまのあぶり刺身

 さんまの背をあぶって香ばしさを出したさんまの刺身。秋浅い頃、さんまの出盛りの時期に食べる刺身は格別や。まあ、さんまのたたきってところやな。

sasimi.png
(転載可能イラスト集から http://illpop.com/food_m26.htm)

☆ ポークスペアリブとトロトロ玉子の旨煮


 圧力鍋でリブを柔らかくして、最後の方にネギを加えてさっと煮て、二つ割りにした半熟玉子ともども、しょうゆ、酒、みりんの合わせに十分ほど漬け込む。
 半熟玉子の黄身のとろみが喉にまとわりつく感覚が、俺は好きである。

☆ ポークスペアリブとダイコンのナンプラー煮

 ナンプラーはタイの魚醤油や。アンチョビ(片口いわし)を塩漬けにして発酵させ,熟成して得られた液体。日本にもしょっつる(秋田)という魚醤油がある。
 調味料にも、ホンマ、いろいろあるなよなあ。

 (注:店内外風景は近影ですが、文章は数年前に書いたものです)


       moritamaya.jpg
       (「美味しい店 北摂の101軒 VOL6」に選定されている)

● ところ:高槻市富田町1-17-8(→ここやで
● 電話:072-694-7061
● 営業時間: 18:00〜24:00
● 定休日:毎週木曜日、第3日曜日
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