エッセイ「満月に吠える」(その①)
満月に吠える(その①)
関西でカレーうどん好きの芸能人といえば、まずは上沼恵美子さんやな。
その上沼恵美子さんが、いつかテレビで、カレーうどんのうまい店探訪をやってた。それが脳裏にあったからに違いあらへん。
残業前の夜食は、いつもは素うどんかそばで済ますことにしてるんやが、その日はカレーうどんを注文した。
ここは職場近くのファミリーレストラン「太鼓亭」。
フリーイラスト(⇒掲載ページ)
待つこと数分、黒塗りの大きな丼鉢の中に、豚肉、ねぎ、たまねぎ、あげのたっぷり入ったカレーうどんが出てきた。
俺にとってカレーの必需品はなんといってもビール。福神漬やラッキョーより何よりビールや。
残業前やから不謹慎やけど、カレーうどんを見たとたん、こりゃビールがいるな、そう思い、俺はビールを注文した。
太鼓亭のカレーうどんは、半端ではない量の豚肉がカレーだしにうまくマッチングしてうまかった。
俺は梅田商店街の一角にある立ち飲み屋「うめや」のカレーうどんが好きで、梅田を通るときは必ず立ち寄ることにしているんやが、そのカレーうどんに匹敵するほどにうまかった。
ファミリーレストランもなかなか侮れない。
うめやのカレーうどんはダシがどろどろしていて色も濃く具も少ない。
そのどろどろしたカレーがうどんにからみついてくるところを、ズルズルと口内に吸い込むその感覚を俺は好きなんやが、太鼓亭のカレーうどんはそれに比べ、カレーの色合いも明るくてとろみも薄いくせに、カレーのダシと野菜と豚肉がいいハーモニーを奏でていたんや。
残業を終えて午後10時頃、俺はいつものように「もりたまYA」に立ち寄った。
もりたまYAは阪急富田駅近くに立地するハイカラな雰囲気の居酒屋や。
阪急富田駅を降りて地下改札を出、京都方面に向かって左の階段を上がった路地を左手に曲がれば、その路地を挟んで、餃子の「王将」、居酒屋「長助」、そば処「尾形」、立ち呑み「膳」が並んでいるんやが、それらの店と駐輪場や民家を隔てたその向こうに、焼き鳥「串太」と並んでもりたまYAはある。
カウンターテーブル8席の1番奥に4人が向かい合わせに座ることのできるテーブルが1席置かれた縦長の店で、常連客のみんながたまちゃんと呼ぶ女性シェフの経営する店なんや。
この日、店内に入ると、中央の白板にあれこれの創作料理のメニューと一緒に、タイ風チキンカレーの名がいつものたまちゃんの遊び字で書かれてた。
久しぶりや。たまちゃんのチキンカレーを食べたのは2ヶ月ほど前のことやった。
こんなにうまいのに、たまちゃんはきまぐれシェフやから、1ヶ月か2ヶ月に1回くらいしかチキンカレーを作らへん。
今日はついてる、そう思い俺は、迷わず生ビールにチキンカレーを注文した。
ビールを1口、2口啜っていると、肌色にやや黄みがかったカレールーの中に、皮つきのまま真二つに割って煮た小ぶりのじゃがいもと、肉片がもげ落ちるのを今か今かと待ちわびるまでにグツグツ煮た骨付きチキンを、2片浮かべたエスニック風カレーが出てきた。
ルーを一口啜ると口内に独特の辛味が果てしなく広がり私の舌を刺した。辛い。
けど、じわりとうまい。
数種類の香辛料が交じり合わされているに違いあらへんが、鼻腔をくすぐるこの香りはシナモンでもウコンでもない。
たまちゃんに聞くとガラムマサクというタイあたりの香辛料やという。
肥後橋のオフィス街に「忘れな草」というちょっと小じゃれた立ち呑み屋があって、その店のチキンカレーは水を一切使わず、トマトだけで仕上げていることで有名やが、その味を俺は思い出した。
コクという点ではあっちの方が上やろうが、辛味の味わいという点ではたまちゃんのチキンカレーの方が一歩先んじているかもしれへん。
まったくその辛さには泣けてくる。
俺はこの夜、ビールに続いて紅乙女の焼酎の湯割りを2杯追加して、カレーをスプーンで根こそぎ掬って食べ尽くし、11時前にもりたまYAを後にした。
チャリンコを走らせ、11時20分頃我が家に着くと、もう既に子らは寝ていて、風呂場から嫁はん陽気な歌声が聞こえてきた。
今日の晩御飯は何やったんやろうと台所を見るとなんとカレーや。
たまちゃんのカレーが1ヶ月か2ヶ月に1回、嫁はんカレーが半月に1回ぐらいやから、これは驚くほどの偶然やない。
そういえ、数日前、近くのスーパー「サンデー」で、コクマロカレーが1人3箱まで1箱100円の特売をしていて、それを買ったと嫁はん言っていたのを思い出した。
嫁はんカレーはオーソドックスや。
たまねぎを炒めて肉とニンジンとじゃがいもを煮て、最後に牛乳でまろやかさを出して出来上がり。
物には流れというもんがある。
カレーうどん、チキンカレーと続いたんや。腹は満杯に近いが、ここはやはり嫁はんのオーソドックスカレーを食べない手はない。
それにカレーは作りたてよりも、いったん冷ました後に再び火をかけた方がうまい。
そう思い、俺はカレーなべを火にかけ、冷蔵庫からまたぞろ缶ビールを取り出し呑みながら、カレーの温まるのを待つことにした。
関西でカレーうどん好きの芸能人といえば、まずは上沼恵美子さんやな。
その上沼恵美子さんが、いつかテレビで、カレーうどんのうまい店探訪をやってた。それが脳裏にあったからに違いあらへん。
残業前の夜食は、いつもは素うどんかそばで済ますことにしてるんやが、その日はカレーうどんを注文した。
ここは職場近くのファミリーレストラン「太鼓亭」。

フリーイラスト(⇒掲載ページ)
俺にとってカレーの必需品はなんといってもビール。福神漬やラッキョーより何よりビールや。
残業前やから不謹慎やけど、カレーうどんを見たとたん、こりゃビールがいるな、そう思い、俺はビールを注文した。
太鼓亭のカレーうどんは、半端ではない量の豚肉がカレーだしにうまくマッチングしてうまかった。
俺は梅田商店街の一角にある立ち飲み屋「うめや」のカレーうどんが好きで、梅田を通るときは必ず立ち寄ることにしているんやが、そのカレーうどんに匹敵するほどにうまかった。
ファミリーレストランもなかなか侮れない。
うめやのカレーうどんはダシがどろどろしていて色も濃く具も少ない。
そのどろどろしたカレーがうどんにからみついてくるところを、ズルズルと口内に吸い込むその感覚を俺は好きなんやが、太鼓亭のカレーうどんはそれに比べ、カレーの色合いも明るくてとろみも薄いくせに、カレーのダシと野菜と豚肉がいいハーモニーを奏でていたんや。
残業を終えて午後10時頃、俺はいつものように「もりたまYA」に立ち寄った。
もりたまYAは阪急富田駅近くに立地するハイカラな雰囲気の居酒屋や。
阪急富田駅を降りて地下改札を出、京都方面に向かって左の階段を上がった路地を左手に曲がれば、その路地を挟んで、餃子の「王将」、居酒屋「長助」、そば処「尾形」、立ち呑み「膳」が並んでいるんやが、それらの店と駐輪場や民家を隔てたその向こうに、焼き鳥「串太」と並んでもりたまYAはある。
カウンターテーブル8席の1番奥に4人が向かい合わせに座ることのできるテーブルが1席置かれた縦長の店で、常連客のみんながたまちゃんと呼ぶ女性シェフの経営する店なんや。
この日、店内に入ると、中央の白板にあれこれの創作料理のメニューと一緒に、タイ風チキンカレーの名がいつものたまちゃんの遊び字で書かれてた。
久しぶりや。たまちゃんのチキンカレーを食べたのは2ヶ月ほど前のことやった。
こんなにうまいのに、たまちゃんはきまぐれシェフやから、1ヶ月か2ヶ月に1回くらいしかチキンカレーを作らへん。
今日はついてる、そう思い俺は、迷わず生ビールにチキンカレーを注文した。
ビールを1口、2口啜っていると、肌色にやや黄みがかったカレールーの中に、皮つきのまま真二つに割って煮た小ぶりのじゃがいもと、肉片がもげ落ちるのを今か今かと待ちわびるまでにグツグツ煮た骨付きチキンを、2片浮かべたエスニック風カレーが出てきた。
ルーを一口啜ると口内に独特の辛味が果てしなく広がり私の舌を刺した。辛い。
けど、じわりとうまい。
数種類の香辛料が交じり合わされているに違いあらへんが、鼻腔をくすぐるこの香りはシナモンでもウコンでもない。
たまちゃんに聞くとガラムマサクというタイあたりの香辛料やという。
肥後橋のオフィス街に「忘れな草」というちょっと小じゃれた立ち呑み屋があって、その店のチキンカレーは水を一切使わず、トマトだけで仕上げていることで有名やが、その味を俺は思い出した。
コクという点ではあっちの方が上やろうが、辛味の味わいという点ではたまちゃんのチキンカレーの方が一歩先んじているかもしれへん。
まったくその辛さには泣けてくる。
俺はこの夜、ビールに続いて紅乙女の焼酎の湯割りを2杯追加して、カレーをスプーンで根こそぎ掬って食べ尽くし、11時前にもりたまYAを後にした。
チャリンコを走らせ、11時20分頃我が家に着くと、もう既に子らは寝ていて、風呂場から嫁はん陽気な歌声が聞こえてきた。
今日の晩御飯は何やったんやろうと台所を見るとなんとカレーや。
たまちゃんのカレーが1ヶ月か2ヶ月に1回、嫁はんカレーが半月に1回ぐらいやから、これは驚くほどの偶然やない。
そういえ、数日前、近くのスーパー「サンデー」で、コクマロカレーが1人3箱まで1箱100円の特売をしていて、それを買ったと嫁はん言っていたのを思い出した。
嫁はんカレーはオーソドックスや。
たまねぎを炒めて肉とニンジンとじゃがいもを煮て、最後に牛乳でまろやかさを出して出来上がり。
物には流れというもんがある。
カレーうどん、チキンカレーと続いたんや。腹は満杯に近いが、ここはやはり嫁はんのオーソドックスカレーを食べない手はない。
それにカレーは作りたてよりも、いったん冷ました後に再び火をかけた方がうまい。
そう思い、俺はカレーなべを火にかけ、冷蔵庫からまたぞろ缶ビールを取り出し呑みながら、カレーの温まるのを待つことにした。
- 関連記事
-
- エッセイ「地球の青さに息を飲む」(その②) (2011/09/30)
- エッセイ「地球の青さに息を飲む」(その③) (2011/09/30)
- エッセイ「満月に吠える」(その①) (2011/10/03)
- エッセイ「満月に吠える」(その②) (2011/10/03)
- エッセイ「満月に吠える」(その③) (2011/10/03)
いい記事だなって思ったらポチっと応援をお願いします。
にほんブログ村
ランチブログ ブログランキングへ
タグキーワード
- No Tag