断酒日記再び(4/15)
10数年前に死んだ父もアルコール依存症なのだった。
母と姉がこのままではアル中で死んでしまうと、十全会というアルコール中毒症専門の病院に入院させようと話し合い始めたとき、父は何かを悟り、50歳を前にして断酒会に入ったのだった。
それから死ぬまで、父は1滴のアルコールも口にしなかったのだった。
その父の思い出。
昼日中、私が庭で一人あそんでいるときのことなのだった。
父は縁側に座ってポロポロ泣いているのだった。
私は、最初、なぜ父が泣いているのか、皆目、わからないのだった。
一人遊びをしながら、父を見ると、私を凝視しながら、相変わらず泣き続けているのだった。
それは、泣き上戸の父が、昼日中から焼酎を飲んで泣いているにすぎなかったのだが、そのことを知らない私は、そのうち、父が日頃の私の行いを何もいわずに涙でいさめているような気分になってくるのだった。
そして、遂には、私もその父の姿に耐えられず「とおちゃん、堪忍してや。きっと、もう悪いことはせえへんから」そう何度も繰り返し謝りながら、一緒に泣きじゃくり始めるのだった。
また、ある日。
父は、いつものように、村の中心部に1件だけほそぼそと営業している居酒屋で飲んでいるに違いない日のことだった。
その居酒屋は、私の家からは見えようはずもなかったのだが、私は家の裏の土手道に立ち、その店の方角に目をやりながら、ひたすら父の帰りを待つのだった。
帰ってきたら帰ってきたで、また、母との間で際限のない諍いが繰り返され、その姿を悲しく見つめながら、心を寒々とさせるだけのことだったが、それでも私はそうして父の帰りをいつまでも待っているのだった。
それは悲しい思い出なのだった。
父もアルコール依存症から立ち直ったのである。私にもできないはずはない。今日から酒をやめよう。
私は、もう、数え切れないほどの断酒の誓いを、またもや繰り返すのだった。
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