断酒日記再び(11/12 プラットフォームで)
■ プラットホームで
昨日は日曜日。高校1年生の息子の聡が、学校でクラシックギター部に所属していて、その発表会があった。家族皆して演奏会にいくことになった。
実家のお義母さんも誘うと、一緒にいくというので、妻と娘の由美はお義母さんを迎えに行き、その足で会場に直行。私は一人で会場に向かうことにした。
私は、いつもはチャリンコで会社に通っているから、電車にはあまり乗らない。久しぶりである。
乗車券を買ってプラットホームに上がると、私と同じ年格好の背広姿の中年の男性が、ベンチに座ってビールを飲んでいた。紙袋で隠しているが、私には彼の仕草からすぐそれとわかった。
ついつい紙袋に目がいく。あれは、スーパードライか。それともキリンの淡麗か。思わず喉がなる。
私にも経験がある。昼日中にプラットホームで飲むビールは、ちょっとした罪悪感がスパイスになって特に旨い。誰かに、何、この人といった目で見られると、余計旨い。まあ、これは冗談だが。
ああ、この人もアルコール依存やな、そう思いながらもなおも紙袋を見つめていると、その男性と視線があった。どうやら私は知らない間に彼の手元ばかりを凝視していたようである。
彼は、私の視線をはずして、ついとベンチを立ち、勢いよく残りのビールを喉に流し込んだ。そして、ゴミ箱に空き缶を投げ込み、何くわぬ顔でホームの先頭の方に早足に歩いていった。
(ああ、俺も飲みてえなあ。今日は断酒5日目。もつやろか)
■ 演奏発表会
発表会は、大阪北部のある私大の大講堂で、北部の公私立高校10数校が集まり行われた。
聡たちの学校の演目を見ると、久保田早紀の「異邦人」、ビィバルディーの「調和の霊感 第1楽章 第2楽章」とある。
異邦人はなじみ深いが、ビィバルディーのなんたらといわれても私にはとんとわからない。
しかし、私にも中学生の頃、ブラスバンド部に入りたくて仕方がない時期があり、働き出してからは、ギターを習って友人と2人で演奏した経験がある。
今は、好んで演奏会場にいくことはないが、聡が出るというのでこうしてきてみると、若かりし日の思い出が、心の奥底の襞の間から染み出てきて、ちょっと小躍りしたい気分だ。
聡たちの演奏が始まり、家族皆して聞き入る。うまいものである。いつも間にこんなに成長したのか。1列目に2年生が座って演奏し、聡たち1年生は2列目である。リズムに合わせて体を揺らし、左手でギターをしっかり支え、右指は軽やかに弦盤の上で踊っている。
私は演奏を聴きながら思った。
(まずは断酒、これが始まりやが、断酒の次には借金問題がある。断酒が継続できても、この借金問題が片付かんことにはどうにもならん。聡や由美を路頭に迷わすわけにはいかん。まずは断酒、次に借金。ホンマにどうしたもんか)
借金を重ねながら飲んでいるときは、こんな風には考えなかった。その代わりにときどき自殺を考えた。
(にっちもさっちもいかんなったら死ねばええ。借金を抱えたまま死ねば、妻や子らには迷惑をかけるがそれも仕方ない。電車に飛び込んだり、ビルから飛び降りるんは痛いからイヤやが、淀川に身を沈めるんやったらなんとかできるやろ)
そんな思いを抱えて、家から10数分チャリンコを走らせれば着くことにできる淀川の堤防辺りで、身を沈めることのできそうな場所を探したこともある。
断酒している今も、その思いは常にどこかでうごめいてはいる。しかし、死にたくはない。死ぬのはつまらないと思う。できることなら生きていたい。
さあ、この借金をどうしたものか。答えはまだ見つからない。
それはさておき、聡のことである。会社の近くの公園にくすのきがある。回りに木々がないから、このくすのきだけが自由奔放に四方に枝葉を伸ばし、すくすくと育っている。まだ若木である。
このくすのきを見るにつけ私は思う。
(聡よ、これからいろいろ紆余曲折があるやろが、この父を見習わず、お母さんを大事に、妹の由美を思いやって、このくすのきのようにスクスク育ってくれよ)
■ 晩ご飯
妻と由美らは、演奏会に最後まで残って、その後マクドナルドにいくというので、私は早めに会場を後にして家に帰った。
家で断酒ブログをサーフィンしていると、妻から、「聡とは別行動になった。しばらくしたら聡が帰るから晩ご飯よろしく」とのメールがきた。
冷蔵庫にあるものですまそうと、私は、ミニバーグとたまねぎ炒めという極めて質素な晩ご飯を作ることにした。
作りながら、もう一人の私から、「冷蔵庫にバーボンがあるぞ。ストレートでクイッと1杯どうや」とお誘いを受けたが、丁寧に断った。
昨夜は、お茶で腹がタポタポにはなったが、2日前ほどに飲酒欲求はなかった。夜中に足はつったけどね。
5日目断酒達成。1日断酒、これあるのみである。
■ 今日の弁当
「また、こんなんかいな、毎日似たもんばっかりで、ようあきんなあ」という声が聞こえてきそうだ。私もそう思う。しかし、弁当も継続こそ大切。そんな今日の弁当。
◇ ウィンナーとたまねぎ炒め
◇ 卵焼き
◇ かぼちゃ煮のおかか和え
電子出版プラットフォーム「パブー」から、田中かわずのペンネームで、400字詰め原稿用紙で10枚程度の短編小説「桜」「みっちゃんへ」「ピヨピヨ」「ベロの辛抱」、中編小説「おばあちゃんへの贈り物」を電子出版しました。無料です。よかったら読んでね。
エッセイ「オレのリハビリ日記」をパブーから有料で電子出版しました。300円です。よかったら買って読んでね。
昨日は日曜日。高校1年生の息子の聡が、学校でクラシックギター部に所属していて、その発表会があった。家族皆して演奏会にいくことになった。
実家のお義母さんも誘うと、一緒にいくというので、妻と娘の由美はお義母さんを迎えに行き、その足で会場に直行。私は一人で会場に向かうことにした。
乗車券を買ってプラットホームに上がると、私と同じ年格好の背広姿の中年の男性が、ベンチに座ってビールを飲んでいた。紙袋で隠しているが、私には彼の仕草からすぐそれとわかった。
ついつい紙袋に目がいく。あれは、スーパードライか。それともキリンの淡麗か。思わず喉がなる。
私にも経験がある。昼日中にプラットホームで飲むビールは、ちょっとした罪悪感がスパイスになって特に旨い。誰かに、何、この人といった目で見られると、余計旨い。まあ、これは冗談だが。
ああ、この人もアルコール依存やな、そう思いながらもなおも紙袋を見つめていると、その男性と視線があった。どうやら私は知らない間に彼の手元ばかりを凝視していたようである。
彼は、私の視線をはずして、ついとベンチを立ち、勢いよく残りのビールを喉に流し込んだ。そして、ゴミ箱に空き缶を投げ込み、何くわぬ顔でホームの先頭の方に早足に歩いていった。
(ああ、俺も飲みてえなあ。今日は断酒5日目。もつやろか)
■ 演奏発表会
発表会は、大阪北部のある私大の大講堂で、北部の公私立高校10数校が集まり行われた。
聡たちの学校の演目を見ると、久保田早紀の「異邦人」、ビィバルディーの「調和の霊感 第1楽章 第2楽章」とある。
異邦人はなじみ深いが、ビィバルディーのなんたらといわれても私にはとんとわからない。
しかし、私にも中学生の頃、ブラスバンド部に入りたくて仕方がない時期があり、働き出してからは、ギターを習って友人と2人で演奏した経験がある。
今は、好んで演奏会場にいくことはないが、聡が出るというのでこうしてきてみると、若かりし日の思い出が、心の奥底の襞の間から染み出てきて、ちょっと小躍りしたい気分だ。
聡たちの演奏が始まり、家族皆して聞き入る。うまいものである。いつも間にこんなに成長したのか。1列目に2年生が座って演奏し、聡たち1年生は2列目である。リズムに合わせて体を揺らし、左手でギターをしっかり支え、右指は軽やかに弦盤の上で踊っている。
私は演奏を聴きながら思った。
(まずは断酒、これが始まりやが、断酒の次には借金問題がある。断酒が継続できても、この借金問題が片付かんことにはどうにもならん。聡や由美を路頭に迷わすわけにはいかん。まずは断酒、次に借金。ホンマにどうしたもんか)
借金を重ねながら飲んでいるときは、こんな風には考えなかった。その代わりにときどき自殺を考えた。
(にっちもさっちもいかんなったら死ねばええ。借金を抱えたまま死ねば、妻や子らには迷惑をかけるがそれも仕方ない。電車に飛び込んだり、ビルから飛び降りるんは痛いからイヤやが、淀川に身を沈めるんやったらなんとかできるやろ)
そんな思いを抱えて、家から10数分チャリンコを走らせれば着くことにできる淀川の堤防辺りで、身を沈めることのできそうな場所を探したこともある。
断酒している今も、その思いは常にどこかでうごめいてはいる。しかし、死にたくはない。死ぬのはつまらないと思う。できることなら生きていたい。
さあ、この借金をどうしたものか。答えはまだ見つからない。
それはさておき、聡のことである。会社の近くの公園にくすのきがある。回りに木々がないから、このくすのきだけが自由奔放に四方に枝葉を伸ばし、すくすくと育っている。まだ若木である。
このくすのきを見るにつけ私は思う。
(聡よ、これからいろいろ紆余曲折があるやろが、この父を見習わず、お母さんを大事に、妹の由美を思いやって、このくすのきのようにスクスク育ってくれよ)
■ 晩ご飯
妻と由美らは、演奏会に最後まで残って、その後マクドナルドにいくというので、私は早めに会場を後にして家に帰った。
家で断酒ブログをサーフィンしていると、妻から、「聡とは別行動になった。しばらくしたら聡が帰るから晩ご飯よろしく」とのメールがきた。
冷蔵庫にあるものですまそうと、私は、ミニバーグとたまねぎ炒めという極めて質素な晩ご飯を作ることにした。
作りながら、もう一人の私から、「冷蔵庫にバーボンがあるぞ。ストレートでクイッと1杯どうや」とお誘いを受けたが、丁寧に断った。
昨夜は、お茶で腹がタポタポにはなったが、2日前ほどに飲酒欲求はなかった。夜中に足はつったけどね。
5日目断酒達成。1日断酒、これあるのみである。
■ 今日の弁当
「また、こんなんかいな、毎日似たもんばっかりで、ようあきんなあ」という声が聞こえてきそうだ。私もそう思う。しかし、弁当も継続こそ大切。そんな今日の弁当。
◇ ウィンナーとたまねぎ炒め
◇ 卵焼き
◇ かぼちゃ煮のおかか和え
電子出版プラットフォーム「パブー」から、田中かわずのペンネームで、400字詰め原稿用紙で10枚程度の短編小説「桜」「みっちゃんへ」「ピヨピヨ」「ベロの辛抱」、中編小説「おばあちゃんへの贈り物」を電子出版しました。無料です。よかったら読んでね。
エッセイ「オレのリハビリ日記」をパブーから有料で電子出版しました。300円です。よかったら買って読んでね。
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