断酒日記再び(12/5 アルコール健康障害対策基本法について(その②)
■ アルコール健康障害対策基本法について(その②)
アルコール依存症患者とその家族の支援を目指した「アルコール健康障害対策基本法案」の国会提出が、衆議院の解散で先送りになったことについては、11月30日の記事に、アルコール健康障害対策基本法について(その①)と題して書きました。(→掲載ページ)。
今日の記事はその第2弾ですが、便宜上、話の流れをわかりやすくするために、既に掲載したアルコール健康障害対策基本法について(その①)を再掲し、続けてその②を書きます。
自分自身の勉強のために書いたもので、まったくおもしろみのない記事ですが、よければお読みください。
■ アルコール健康障害対策基本法について(その①)
新聞記事によると、アルコール依存症患者とその家族の支援を目指した「アルコール健康障害対策基本法案」の国会提出が、衆議院の解散で先送りになったそうです(→掲載ページ)。
私はこの話を、情けのないことに、「断酒ブログ」(→掲載ページ)を読んで初めて知りました。そこで、今回は「福岡県飲酒運転撲滅運動の推進に関する条例」(→掲載ページ)に引き続いて、この法案について何回かに分けて考えてみたいと思います。
◇ アメリカのヒューズ法
日本でもこれまでにも、アルコール関連問題(依存症を軸とした、飲酒による事故、負傷、疾病、欠勤、休職、免職、家庭不和、離婚、子どもの問題行動などを総合した概念-「アメリカ及びスウェーデンのアルコール政策」中本新一-→掲載ページ)について、アメリカのヒューズ法のような基本法を作る動きがありました。
アメリカでは、1920年に酒害をなくすことを目的に禁酒法が制定されましたが、これは皆さんご存知のとおり、結局、あのアルカポネなどのギャングが暗躍するアンダーグラウンドな世界をはびこらせることになって失敗に終わります。
禁酒法終結後、その反省から、国民に飲酒と自己決定の自由を保障しつつ、社会的観点からアルコールの弊害をなくそうという「アルコール・コントロール」という概念が生み出され、これにAA運動(アルコホーリクス・アノニマス)(→掲載ページ)が連動して、1970年に「アルコール乱用及びアルコール依存症の予防・治療・リハビリテーションに関する総合法」が制定されました。
この法律は、自らのアルコール依存をAAで回復させたハロルド・E・ヒューズ上院議員の熱意で実ったものであることから、通称「ヒューズ法」と呼ばれています。
ヒューズ法は500か条という膨大な条文からなっていますが、その内容の骨子は次のようです。
1 法の目的を実現するために補助金を出す
2 専門職を養成する
3 州政府、病院がAAと連携する
4 国民にアルコール依存症に関する知識を与え、治療を保障する
日本でも、このヒューズ法にならって、アルコール関連問題に関する基本法の制定に向けた動きはあったのですが、実現には至りませんでした。(その②に続く)
■ アルコール健康障害対策基本法について(その②)
◇ アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略
次に、アルコール健康障害対策に関する世界の動きについて見ていきましょう。
アルコール飲酒に起因する身体的健康障害(肝臓などの臓器障害など)、精神的健康障害(アルコール依存、自殺、うつなど)、家庭問題(アルコールハラスメント、家庭崩壊など)、社会問題(交通事故、貧困、失業など)は、日本のみならず、全世界的に解決しなければならない各国共通の問題となっています。
そこで、アルコールに対して規制の厳しいスウェーデン(国が酒を販売する量や値段などをコントロールしている)他42カ国が、WHO(世界保健機構)にたばこのような国際基準作り(たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約→掲載ページ)を行うよう共同提案しました。
しかし、アメリカや日本などは国際基準づくりには消極的で、結局、WHOがアルコール問題について、各国が取り組むべき行動指針のメニューを打ち出し、そのメニューをどう消化するかは各国の判断にゆだねる形で、2010年5月に「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を決議したのです(世界戦略→掲載ページ)。
したがって、この世界戦略は守るべき国際基準ではなく、WHOの加盟国があくまでアルコール健康障害問題について解決を図っていくべき指標を定めたものにすぎませんが、それでも大きな前進です。
この戦略は、2013年5月のWHO総会までに、各加盟国が戦略にしたがいどのような対策をとったかをWHOに報告することを義務付けています。
この戦略の内容はというと、
1 飲酒運転への対応・・・飲酒検問の強化、飲酒店終了後の代替交通の整備など
2 販売制限・・・販売場の数と立地の制限、販売できる日数や時間の制限など
3 広告制限・・・広告内容と量の制限、スポンサー活動の規制など
4 価格設定方針・・・割引販売、原価割れ販売、飲み放題均一料金、大量販売の禁止または制限、アルコールの最低価格の設定
など、アルコール問題を10項目に分類し、「加盟国の宗教的、文化的背景、公衆衛生に関する国の優先事項などそれぞれの状況を考慮し、国レベルで適切に実施すること」を求めるものとなっています(ブログ「ヤマアラシのジレンマ」から一部引用)。
◇ WHOの戦略を受けた日本の動き
この世界戦略を受けて、日本でもアルコール健康障害問題にかかる法制化の動きが本格化しました。
まず、日本アルコール関連問題学会(→掲載ページ)、日本アルコール・薬物医学会(→掲載ページ)、日本依存神経精神科学会(旧:日本アルコール精神医学会)の3学会が協働を開始し、2011年1月、わが国のアルコール関連問題の現状をまとめた「簡易版アルコール白書」(→掲載ページ)を発行、震災直後の3月には、基本法についての「3学会合同構想委員会」を発足させました。
そこで、ここでは、この「簡易版アルコール白書」がアルコール健康障害問題をどのように認識把握しているかについて、その概要を掲載しておきます。
(1)アルコールによる年間死亡者数
アルコールによる年間死亡者数は約35000人と推計され、これは総死亡数の3.1%にあたる。
(2)アルコール依存症および多量飲酒者の推計数
わが国のアルコール依存症の頻度をあきらかにするために行われた2003年6月の全国調査によれば、AUDIT(アルコール問題簡易検査)(→掲載ページ)12点以上(常用飲酒者)は654万人、有害な使用者は218万人、アルコール依存症者は80万人に達している。
以前の調査結果と比較すると、女性の飲酒者率が倍増している。
(3)アルコール関連問題の社会的費用
1987年の統計に基づくアルコール乱用による社会的費用は6兆6375億円に達し、これは国民総生産(GDP)の約1.9%を占め、その割合は海外での報告(0.5~2.7%)と同程度である。
アルコール乱用による医療費は、国民医療費の6.9%に相当する。
(4) 飲酒による疾患
アルコールによる臓器障害は、肝臓、膵臓、脳、神経、心臓、筋肉、骨など全身の臓器に及び、さらにアルコールは発ガン(口腔、咽頭、食道、肝臓、大腸、乳房など)、糖尿病、感染症のリスクを高める。
アルコール依存症では突然死も多く、病気だけでなく外傷も多く見られる。
妊娠中の母親が飲酒することによって、胎児性アルコール症候群(FAS)が現れ、顔面の奇形、身体発達や知的発達に障害を生じる。
未成年者の飲酒は、依存形成を早めて、性機能の発達に障害をきたす。若年アルコール依存症の治療成績の悪いことはその特徴の一つである。
(5)アルコールとうつ病、自殺
アルコール依存症は、うつ病と並ぶ自殺の重要なリスクであり、自殺のリスクを60から120倍に高める。
多くの国で、国内アルコールの消費量と男性の自殺死亡率が正の相関を示す。
国内の調査では、多量飲酒が男性の自殺リスクを高めることが示されている。
国内の調査では、自殺死亡者の21%に、死亡する1年前にアルコール関連問題が認められ、その80%はアルコール依存症に該当していたが、飲酒の問題とは認識されていない。
これらの調査結果は、自殺予防にアルコール問題への対策が不可欠であることを示している。
(6)アルコールと労働
職場の安全衛生にとって、多量飲酒や不適切な飲酒への対策は、重要課題のひとつである。
多量飲酒や不適切な飲酒は、労働者の様々な健康障害の主要因となっているほか、職場のモラルおよび生産性の低下、労災事故等にも関連していることがある。
職場は、労働者の飲酒にとって、助長因子にも抑制因子にもなりうる。
現在、多くの職場で推進されているメンタルヘルス対策においても、アルコール関連問題が取り上げられるべきである。
(7)飲酒運転
飲酒運転の減少には、アルコール依存症への対策が鍵を握っている。
アルコール依存症だけでなく、飲酒量が多い者や習慣飲酒者にもその危険は多い。
飲酒運転対策には、行政・司法・医療の協力が必要になる。
(8)アルコールと児童虐待および家庭内暴力
飲酒による酩酊などの短期的影響や長期的な問題は、児童虐待やDV行為を促進する。
家庭内暴力では、暴力加害者が飲酒をしていることが多い一方、暴力被害者にも飲酒の問題が関連している。
DVや家庭内暴力は、その家庭のこどもが暴力被害を受けなかったとしても、心理的に深刻な影響をこどもに与えることが知られている。
(9)アルコールと犯罪
アルコールは暴力犯罪のリスクを高める。
犯罪に至らないまでも、アルコールによるハラスメント被害の割合が高いことが、全国調査で示されている。
アルコールは、暴力被害のリスクにも関連しており、他殺遺体の剖検例の55%からアルコールが検出されている。
国内で公表されているデータから、窃盗が飲酒と関連する犯罪であることが示されているが、その他の犯罪とアルコールの関連については情報が乏しく、実態は不明である。
(10)アルコールと女性・高齢者
・20代前半の若い女性の飲酒者の割合は、同年代の男性より高く、過去の飲酒実態調査を通して初めて、女性の飲酒者の割合が男性を上回った。
・女性は男性より少ない飲酒量、飲酒期間で肝障害をきたし、依存の形成も同じ傾向である。
・アルコール依存症の基本的な症状は男女共通だが、女性アルコール依存症者は男性と比較して以下のような特徴を有する。
1 摂食障害やうつ病などの精神科合併症が男性より多い。
2 生育歴において、性的・身体的虐待の経験を有する割合が高い。
3 親や配偶者との問題を契機として飲酒の問題が発展することが多い。
4 社会の偏見は男性に対するものより強い。
5 治療では、女性だけで治療グループを形成することが望ましいが、そのようなプログラムを実施している施設は少なく、治療環境の整備が必要である。
6 家事・育児などの役割のため、入院治療やその後のリハビリ等の回復に専念できないという問題を抱えている。
7 高齢者は、若い世代よりも少量の飲酒で酩酊するため、アルコールの問題を起こしやすい。
8 常用する薬剤との併用や高齢者独特のストレス等が、高齢者における飲酒問題の引き金になる。
9 高齢アルコール依存症者は年々増加している。
10 高齢アルコール依存症者は、認知症の合併が多い。
11 介護施設利用者にもアルコール問題を有する者が多く、約8割の居宅介護従事者が利用者のアルコール問題を経験しており、介護者の身体的・精神的負担となっている。
(アルコール健康障害対策基本法について(その③)に続く)
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アルコール依存症患者とその家族の支援を目指した「アルコール健康障害対策基本法案」の国会提出が、衆議院の解散で先送りになったことについては、11月30日の記事に、アルコール健康障害対策基本法について(その①)と題して書きました。(→掲載ページ)。
自分自身の勉強のために書いたもので、まったくおもしろみのない記事ですが、よければお読みください。
■ アルコール健康障害対策基本法について(その①)
新聞記事によると、アルコール依存症患者とその家族の支援を目指した「アルコール健康障害対策基本法案」の国会提出が、衆議院の解散で先送りになったそうです(→掲載ページ)。
私はこの話を、情けのないことに、「断酒ブログ」(→掲載ページ)を読んで初めて知りました。そこで、今回は「福岡県飲酒運転撲滅運動の推進に関する条例」(→掲載ページ)に引き続いて、この法案について何回かに分けて考えてみたいと思います。
◇ アメリカのヒューズ法
日本でもこれまでにも、アルコール関連問題(依存症を軸とした、飲酒による事故、負傷、疾病、欠勤、休職、免職、家庭不和、離婚、子どもの問題行動などを総合した概念-「アメリカ及びスウェーデンのアルコール政策」中本新一-→掲載ページ)について、アメリカのヒューズ法のような基本法を作る動きがありました。
アメリカでは、1920年に酒害をなくすことを目的に禁酒法が制定されましたが、これは皆さんご存知のとおり、結局、あのアルカポネなどのギャングが暗躍するアンダーグラウンドな世界をはびこらせることになって失敗に終わります。
禁酒法終結後、その反省から、国民に飲酒と自己決定の自由を保障しつつ、社会的観点からアルコールの弊害をなくそうという「アルコール・コントロール」という概念が生み出され、これにAA運動(アルコホーリクス・アノニマス)(→掲載ページ)が連動して、1970年に「アルコール乱用及びアルコール依存症の予防・治療・リハビリテーションに関する総合法」が制定されました。
この法律は、自らのアルコール依存をAAで回復させたハロルド・E・ヒューズ上院議員の熱意で実ったものであることから、通称「ヒューズ法」と呼ばれています。
ヒューズ法は500か条という膨大な条文からなっていますが、その内容の骨子は次のようです。
1 法の目的を実現するために補助金を出す
2 専門職を養成する
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4 国民にアルコール依存症に関する知識を与え、治療を保障する
日本でも、このヒューズ法にならって、アルコール関連問題に関する基本法の制定に向けた動きはあったのですが、実現には至りませんでした。(その②に続く)
■ アルコール健康障害対策基本法について(その②)
◇ アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略
次に、アルコール健康障害対策に関する世界の動きについて見ていきましょう。
アルコール飲酒に起因する身体的健康障害(肝臓などの臓器障害など)、精神的健康障害(アルコール依存、自殺、うつなど)、家庭問題(アルコールハラスメント、家庭崩壊など)、社会問題(交通事故、貧困、失業など)は、日本のみならず、全世界的に解決しなければならない各国共通の問題となっています。
そこで、アルコールに対して規制の厳しいスウェーデン(国が酒を販売する量や値段などをコントロールしている)他42カ国が、WHO(世界保健機構)にたばこのような国際基準作り(たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約→掲載ページ)を行うよう共同提案しました。
しかし、アメリカや日本などは国際基準づくりには消極的で、結局、WHOがアルコール問題について、各国が取り組むべき行動指針のメニューを打ち出し、そのメニューをどう消化するかは各国の判断にゆだねる形で、2010年5月に「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を決議したのです(世界戦略→掲載ページ)。
したがって、この世界戦略は守るべき国際基準ではなく、WHOの加盟国があくまでアルコール健康障害問題について解決を図っていくべき指標を定めたものにすぎませんが、それでも大きな前進です。
この戦略は、2013年5月のWHO総会までに、各加盟国が戦略にしたがいどのような対策をとったかをWHOに報告することを義務付けています。
この戦略の内容はというと、
1 飲酒運転への対応・・・飲酒検問の強化、飲酒店終了後の代替交通の整備など
2 販売制限・・・販売場の数と立地の制限、販売できる日数や時間の制限など
3 広告制限・・・広告内容と量の制限、スポンサー活動の規制など
4 価格設定方針・・・割引販売、原価割れ販売、飲み放題均一料金、大量販売の禁止または制限、アルコールの最低価格の設定
など、アルコール問題を10項目に分類し、「加盟国の宗教的、文化的背景、公衆衛生に関する国の優先事項などそれぞれの状況を考慮し、国レベルで適切に実施すること」を求めるものとなっています(ブログ「ヤマアラシのジレンマ」から一部引用)。
◇ WHOの戦略を受けた日本の動き
この世界戦略を受けて、日本でもアルコール健康障害問題にかかる法制化の動きが本格化しました。
まず、日本アルコール関連問題学会(→掲載ページ)、日本アルコール・薬物医学会(→掲載ページ)、日本依存神経精神科学会(旧:日本アルコール精神医学会)の3学会が協働を開始し、2011年1月、わが国のアルコール関連問題の現状をまとめた「簡易版アルコール白書」(→掲載ページ)を発行、震災直後の3月には、基本法についての「3学会合同構想委員会」を発足させました。
そこで、ここでは、この「簡易版アルコール白書」がアルコール健康障害問題をどのように認識把握しているかについて、その概要を掲載しておきます。
(1)アルコールによる年間死亡者数
アルコールによる年間死亡者数は約35000人と推計され、これは総死亡数の3.1%にあたる。
(2)アルコール依存症および多量飲酒者の推計数
わが国のアルコール依存症の頻度をあきらかにするために行われた2003年6月の全国調査によれば、AUDIT(アルコール問題簡易検査)(→掲載ページ)12点以上(常用飲酒者)は654万人、有害な使用者は218万人、アルコール依存症者は80万人に達している。
以前の調査結果と比較すると、女性の飲酒者率が倍増している。
(3)アルコール関連問題の社会的費用
1987年の統計に基づくアルコール乱用による社会的費用は6兆6375億円に達し、これは国民総生産(GDP)の約1.9%を占め、その割合は海外での報告(0.5~2.7%)と同程度である。
アルコール乱用による医療費は、国民医療費の6.9%に相当する。
(4) 飲酒による疾患
アルコールによる臓器障害は、肝臓、膵臓、脳、神経、心臓、筋肉、骨など全身の臓器に及び、さらにアルコールは発ガン(口腔、咽頭、食道、肝臓、大腸、乳房など)、糖尿病、感染症のリスクを高める。
アルコール依存症では突然死も多く、病気だけでなく外傷も多く見られる。
妊娠中の母親が飲酒することによって、胎児性アルコール症候群(FAS)が現れ、顔面の奇形、身体発達や知的発達に障害を生じる。
未成年者の飲酒は、依存形成を早めて、性機能の発達に障害をきたす。若年アルコール依存症の治療成績の悪いことはその特徴の一つである。
(5)アルコールとうつ病、自殺
アルコール依存症は、うつ病と並ぶ自殺の重要なリスクであり、自殺のリスクを60から120倍に高める。
多くの国で、国内アルコールの消費量と男性の自殺死亡率が正の相関を示す。
国内の調査では、多量飲酒が男性の自殺リスクを高めることが示されている。
国内の調査では、自殺死亡者の21%に、死亡する1年前にアルコール関連問題が認められ、その80%はアルコール依存症に該当していたが、飲酒の問題とは認識されていない。
これらの調査結果は、自殺予防にアルコール問題への対策が不可欠であることを示している。
(6)アルコールと労働
職場の安全衛生にとって、多量飲酒や不適切な飲酒への対策は、重要課題のひとつである。
多量飲酒や不適切な飲酒は、労働者の様々な健康障害の主要因となっているほか、職場のモラルおよび生産性の低下、労災事故等にも関連していることがある。
職場は、労働者の飲酒にとって、助長因子にも抑制因子にもなりうる。
現在、多くの職場で推進されているメンタルヘルス対策においても、アルコール関連問題が取り上げられるべきである。
(7)飲酒運転
飲酒運転の減少には、アルコール依存症への対策が鍵を握っている。
アルコール依存症だけでなく、飲酒量が多い者や習慣飲酒者にもその危険は多い。
飲酒運転対策には、行政・司法・医療の協力が必要になる。
(8)アルコールと児童虐待および家庭内暴力
飲酒による酩酊などの短期的影響や長期的な問題は、児童虐待やDV行為を促進する。
家庭内暴力では、暴力加害者が飲酒をしていることが多い一方、暴力被害者にも飲酒の問題が関連している。
DVや家庭内暴力は、その家庭のこどもが暴力被害を受けなかったとしても、心理的に深刻な影響をこどもに与えることが知られている。
(9)アルコールと犯罪
アルコールは暴力犯罪のリスクを高める。
犯罪に至らないまでも、アルコールによるハラスメント被害の割合が高いことが、全国調査で示されている。
アルコールは、暴力被害のリスクにも関連しており、他殺遺体の剖検例の55%からアルコールが検出されている。
国内で公表されているデータから、窃盗が飲酒と関連する犯罪であることが示されているが、その他の犯罪とアルコールの関連については情報が乏しく、実態は不明である。
(10)アルコールと女性・高齢者
・20代前半の若い女性の飲酒者の割合は、同年代の男性より高く、過去の飲酒実態調査を通して初めて、女性の飲酒者の割合が男性を上回った。
・女性は男性より少ない飲酒量、飲酒期間で肝障害をきたし、依存の形成も同じ傾向である。
・アルコール依存症の基本的な症状は男女共通だが、女性アルコール依存症者は男性と比較して以下のような特徴を有する。
1 摂食障害やうつ病などの精神科合併症が男性より多い。
2 生育歴において、性的・身体的虐待の経験を有する割合が高い。
3 親や配偶者との問題を契機として飲酒の問題が発展することが多い。
4 社会の偏見は男性に対するものより強い。
5 治療では、女性だけで治療グループを形成することが望ましいが、そのようなプログラムを実施している施設は少なく、治療環境の整備が必要である。
6 家事・育児などの役割のため、入院治療やその後のリハビリ等の回復に専念できないという問題を抱えている。
7 高齢者は、若い世代よりも少量の飲酒で酩酊するため、アルコールの問題を起こしやすい。
8 常用する薬剤との併用や高齢者独特のストレス等が、高齢者における飲酒問題の引き金になる。
9 高齢アルコール依存症者は年々増加している。
10 高齢アルコール依存症者は、認知症の合併が多い。
11 介護施設利用者にもアルコール問題を有する者が多く、約8割の居宅介護従事者が利用者のアルコール問題を経験しており、介護者の身体的・精神的負担となっている。
(アルコール健康障害対策基本法について(その③)に続く)
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