断酒日記再び(12/10 歯痛とアルコール依存症)
ここ2、3日、歯が疼いてたまりません。
どうやら、正面に向かって右側の下あたりの虫歯のようです。「どうやら」というのは、右側全体が疼いているので、どの歯が疼いているのかを特定するのが難しいからです。
歯痛にはこれまでどんなに悩まされてきたか。
歯医者にいくのが嫌で嫌でたまりませんでした。
7、8年前のことです。
どうにもこうにも歯が疼いてたまらず、今度こそは根っこからちゃんと治療しようと、意を決して歯医者のドアを叩いたことがあります。
私は、そのとき、こんな手紙を問診表に添えて、窓口に提出したのでした(これは事実です)。
なんで、こんなことをしたのか。
今、思い出してみるに、そうすることによって、今度こそは歯の治療に通うしかないという動機づけを自身にしようと考えたのと、先生や歯科技工士、窓口の事務員さんの歓心を買おうとしたのだったろうと思います。
その手紙とはこうです。
目覚めれば 虫歯の痛みに 耐えかねて 白々夜明けに バファリンを飲む
来るべきときが遂にきた。オレはそう思う。
思い返せば、オレが最後に歯医者にいったんは5年前のことや。そんときも歯が痛んで痛んで辛抱たまらず、今度こそは最後までしっかり治療しようと誓っていたのに、その痛みがとれたらもう歯医者通いを止めたんやった。
あれから上の奥の歯の被せがとれたときも、下の歯がぐらついて歯茎がプックリ膨れて疼いたときも、オレは歯痛に耐えに耐えてきたんや。
両方の上の歯の被せがとれて、まるで壮年期の火山口のように穴の周りに鋭角な歯片が姿を現したとき、四六時中、その歯片をベロで嘗め回し、遂にはその歯片でベロが擦過傷を起こした。
ひょっとするとこの痛みは舌ガンやないかと、耳鼻咽喉科の扉を叩いたんはお笑い草やったが、それでも歯医者にいくのんだけは我慢してきた。
あのおろちの胴体のようにクネクネ動く金属棒のその先端の針や歯車が、クウィーンクウィーンと唸る音を聞くと、小さい頃、下手な歯医者にかかって治療の後の血が止まらず、1日中、口の中が血でネチャついたことや、化膿した歯茎の膿をとるときの耐えがい痛みが、まるで昨日のことのように思い出される。
しかし、もう辛抱ならん。このまま歯痛を放置してたら、オレは気が狂ってしまうかもしれへん。
悪い遊びがカミさんにバレて、その懺悔の印として頭を丸めさせられたと思たら、今度は歯痛とは、ホンマ、ドつぼもいいとこやが、しかし、まあ、それは自業自得というもんや。けど悪い遊びは止められてもこの歯痛だけはどうにもならん。
先生、頼んます。
こりゃあ、総入れ歯にするしか手はないなあなんていわんと、この歯痛のデパートメント、どうにかしとくなはれ。歯医者はオレのトラウマです。ホンマ、痛うてたまらんのです。痛うないようにじょうずに頼んます。
オレはこの4月に、ほら、この近くにある大和川建設事務所に転勤してきたとこやからここらにきて日が浅いんで、先生の歯医者としての腕のほどは、まだ噂にも聞いてへんけど、店の雰囲気からしてきっとじょうずに違いない、そう思てます。
ホンマ、信用してまっせ。オレも今度こそ最後までばんがりますよって、先生、頼みましたで。
それからというもの、歯の治療に通うたびに、私はなにがしかの文章を書いて窓口に出しました。
案の上、先生や技工士から、毎回、おもしろいコメントを書いてくる患者だとの評価だか興味だかを得て、私もそのことが少し得意で、その歯医者にはマメに通ったのです。
■ 最後の手紙
そして、歯の疼きもおさまり、一応の治療が終わったとき、私は、もうこの程度でいいかと次の手紙を最後に、その歯医者通いを止めました。
一見、あまり関係がないように見える歯病とアルコール依存症の間にも、大いに関連があるんですね。先生やスタッフの皆さんにはお元気でしょうか。
妻に悪い遊びがバレて頭を丸坊主にし、夏の日差しがその坊主頭の地肌を照りつけたあの日、私は歯痛の痛みに耐えかねて貴医院を訪れたのでしたが、あれから早いもので、もう5ヶ月が過ぎ年末になりました。
歯病のデパートメントを自認する私の歯の治療は、「大変ですね。そりゃ直射日光は頭によくないですよ。どこが痛むのですか。ほら、口を開けてごらんなさい」そう優しくおっしゃる先生の声で始まったのでした。
それから右下奥歯の神経をとった7度目の治療までは、自らを励まして何とか貴医院に通いましたが、その治療で痛みが治まってからは、予約日を数度延期し、遂にはその延期した予約日をもすっぽかして今日に至っています。
歯痛が治まるとすぐこれです。こうして治療を延期すれば、次の痛みがやってきたときは、また一からの出直しで、更に治療に日数を要することはわかっているのですが、古い歌の文句じゃないけれど、わかっちゃいるけど止められないのです。
これをして人は私のことを、怠惰、モノグサ、いくじなし、人格欠陥、女たらしと非難しますが、小さいときに受けた陵辱的とさえ思える歯の治療のトラウマは、貴医院に治療にいこうとする私の良き心をせき止めてしまうのです。
人の体の中でも精密な知覚器官の1つである舌で口腔内をまさぐると、先生に抜いてもらった左下の奥の歯2本の跡は、スキーを楽しめるほどにつるつる滑ります。神経を抜いて仮の詰物をしてもらった右上の歯は、詰物がとれた跡に活火山の火口のような穴がぽっかり空いています。左上の歯に巣くっていた虫歯は、穴が大きさを増して、来るべき歯痛のときを今か今かと待っているようです。前歯の歯茎は腫れ始めていて、物を噛むとその前歯がやや痛みます。どうやらこの歯がぐらつき始めるのも時間の問題でしょう。
来年こそは決意も新たに貴医院に通いたいと思います。こうしようと決めたときからその決心を実行に移すべきで、元旦の決意なぞ守られはしないと人はいいますが、やはり1年の計は元旦にあり。この正月には、歯病のデパートメントの大掃除、大改修のために貴医院に通う決意をすることを、私は今、このとき、強く決意します。
本年は、懇切に治療していただいた上に、この私のつまらない手紙にもお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
来年が先生やスタッフの皆さん、そして受付のべっぴんさんにとって幸多い年となるとともに、貴医院がますます隆盛されますことを心からお祈り申し上げ、私の新たな決意をここに披露して筆を措きます。
ありがとうございました。では来年早々にきっとお会いしましょう。
■ それから
それから、何年かの間に、治療した歯の被せが取れ、まだ未治療の虫歯はどんどん悪化しました。
グラグラしていた前歯が抜け、歯槽膿漏はより悪化し、口の中が歯病のデパートメントと化しました。
それでも歯医者には行きませんでした。
しかし、今回はどうもよくありません。この歯痛は尋常ではありません。下手をすると歯の根っこが膿んでしまうかも。
断酒を始めて味覚が変わり、このところ、甘いものを結構食べています。そのこともきっと影響しているのでしょう。あちらを立てればこちらが立たずです。
ああ、やだなあ、ホンマに、歯医者にいくの。
ところで、アルコール依存が歯に与える影響ってどんなものがあるのでしょうか。少し調べてみました。
アルコール依存症者の口腔内の実態
1 アルコール依存症者の平均う蝕歯数は6歯、これは一般平均の3倍を示します。歯数は通常28歯で、親知らずを含めても32歯しかありません。
2 通常高齢者に発症する下顎前歯部や歯頸部(歯の付け根部分)のう蝕が認められます。
3 前歯の損傷や口唇の外傷を多く認めます。
4 口腔衛生の低下により食物残渣、歯垢、歯石が付着しています。
5 義歯が汚れたまま使用されています。
6 歯周炎を調査したすべての人にその存在が確認されています。なかには悪化してグラグラ動いている歯があったり、自然に抜け落ちてしまっている人もあります。
7 口臭を自覚していない人が多いようです。
8 う蝕や歯周炎による痛みや歯が無いため、食機能が低下している人もあります。
9 痛みなどの問題を自覚しながら歯科受診をせず放置したままの人もいます。
なぜアルコール依存症になると歯科疾患が多発するのか?
アルコール依存症者は、先にも述べた通り、次第に酒以外は受け付けなくなってしまいます。そのため拒食症など摂食障害者と同様に著しく食事摂取量が低下し、身体機能・免疫力や回復力も低下してしまいます。
また、食物からの水分補給が少なく、利尿効果などにより、慢性的な水分不足の状態にも陥っています。肌も水分が不足するとカサカサになって肌荒れを起こすように、口の中も唾液がなくなるとさまざまな問題が起きるのです。さらに、食事量が減少することで咀嚼回数も減り、唾液の分泌量の低下・質の変化が起き、自浄作用(自らの唾液で口腔内をキレイにする)の低下や口腔乾燥が進み口腔環境が悪化してしまいます。
適正飲酒を心がけましょう。
残念なことに1度アルコール依存症になってしまうと2度と楽しいお酒を飲むことが出来なくなってしまいます。特効薬の無いアルコール依存症では病気を認識し、断酒することだけが回復への唯一の道です。断酒にあたり無くてはならないものは、健全な食機能です。お酒をやめるわけですから、きちんとした食事を取らなければならないし、それが楽しみにもなるわけです。歯がない状態ではもちろん、痛みがあっても美味しく食べられないうえ、これが再飲酒促進因子になる恐れもあります。食べることは人にとって喜びの一つであり、生きるための欲求でもあります。いつまでも楽しく飲み、食べ、会話するためにも健康な口腔機能が必要です。お酒は適量を心がけ、食機能の維持のためにも定期的な歯科受診をお勧めします。(厚生労働省 e-ヘルスネットから引用→掲載ページ)
32日断酒達成。たかが32日、されど32日。1日断酒あるのみ。
■ 今日の弁当
◇ 豚玉、卵焼き、ウィンナー
豚玉は昨日のたこ焼きの残りに豚肉の細切れ肉を混ぜて焼きました。卵焼き、ウィンナーは定番。
電子出版プラットフォーム「パブー」から、田中かわずのペンネームで、400字詰め原稿用紙で10枚程度の短編小説「桜」「みっちゃんへ」「ピヨピヨ」「ベロの辛抱」、中編小説「おばあちゃんへの贈り物」を電子出版しました。無料です。よかったら読んでね。
エッセイ「オレのリハビリ日記」をパブーから有料で電子出版しました。300円です。よかったら買って読んでね。
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