断酒81日目 3つの否認
今日(1月26日(土))は断酒81日目。
昨日、断酒80日達成。たかが80日、されど80日。1日断酒あるのみ。
先週の水曜日に断酒会にいったとき、「新たな展開のためには昼例会を!」と題するパンフレットをもらった。
これは、昨年(平成24年)8月25日に開催された日本断酒連盟主催の東京セミナー基調講演で、医療法人和気会 新生会病院の名誉院長 和気隆三先生が話されたことをまとめたものである。
新生会は大阪府和泉市にあるアルコール依存症治療の専門病院で、和気先生は長年にわたりアルコール依存症の治療に当たられてきたその道のエキスパートである。
この基調講演で、和気院長は断酒会の昼例会の必要性を強調されている。その理由とするところは、
1 高齢者のアルコール依存が増えてきたが、高齢者にとって夜の断酒会への出席は困難。
2 今日、アルコール依存症のために職を失い、社会での信用を失った人の再就労は特に厳しくなっているが、そういう人たちのためにも昼例会が有効。
3 障がい者にとっては、ヘルパーの支援の枠組みの中で昼例会のほうが参加しやすい。
4 医療・行政・介護機関の職員にとっても、勤務時間内に行われる昼例会のほうが参加しやすい
などである。
説得力のある話だが、今日はこのことを書きたくて和気先生の話を紹介するのではない(昼例会のことはまた別の機会に書きたいと思う)。
■ 医師の否認
和気先生は、この講演会の中で、アルコール依存症者に対する医者の対応について述べておられる。概要、こうである。
無視。それがアルコール依存症者の置かれた実態であることを痛感する。一般の人も医療関係者もどうして無視できるのか。その背景にアルコール依存を病気とみなす前に、自業自得、飲んで健康を害してもその人が選んだ人生だからとの思いがあるのではないか。だから目をそらすことができる。医師も一度、アルコール依存症と診断、告知すると、次にどうするかを考えなくてはならない。病名を告知しても反発、認めてくれないなど後が大変だとの思いから、身体的な症状の改善だけですます。わかっていても後が大変なので、病名を告げないのが現状。それが高齢依存症者を診る医師の心情ではないかと考える。
依存者本人も依存症であることを否認、家族もそうであると認めたくなくて否認、それを診る医者も本人のアルコール依存を否認。結局、身体的治療という対症療法に終始しているのが、アルコール依存症の治療の現状だといわれるのである。
長年、アルコール依存の治療に関わってこられ、内科と精神科との連携医療の重要性を説かれている三重県のかすみがうらクリニック副院長 猪野亜朗先生も、和気先生と同じことを述べておられる。引用しよう。
医療関係者にも当事者に対する否認があって当然なのです。「深夜にやってくる」「指示を守らない」「大声でわめく」「繰り返しやってくる」「スタッフの努力は報われない」
なんとかしようとすると、病棟スタッフから冷たい視線でみられて孤立する。こんなトラウマをいくつももっているのです。
そんな結果、医師たちは「アルコール患者は厄介な人」「いうことを聞いてくれいない人」だから「見て見ぬふり」「その場しのぎ」をするようになっていったんです。そんな思いは、私たちアルコール医療に取り組んでいる者の心の中にもあるんです。
■ 3つの否認
本人は「この俺がまさか!」とアルコール依存を否認する。
家族は「確かにうちのお父さんは少々大酒飲みではあるけど、アルコール依存なんかじゃない。それにもしそうだったら世間体が悪いし・・・」と、父親がアルコール依存であることを否認する。
医者は、「この人はアルコール依存だが、病名にそう書くとあとの治療が厄介だ。肝臓の数値がかなり高いのだから、慢性肝炎として治療しよう」と、これまたアルコール依存を否認する。
こんな3つの否認が重なれば、患者はアルコール依存の専門的治療を受けることができずに、ますます病状が悪化するという負のスパイラルに陥ってしまうというわけである。
もちろん、本人は否認していても家族はそのことに気づいていて、本人に治療を進めていたり、本人や家族は否認していても、医者がそれと気づいて本人や家族に専門病院での治療を進めたり、その態様は千差万別であるに違いない。
しかし、中には上に書いたような3つの否認が重なって、アルコール依存の治療を遅らせてしまうことも、きっとあると思う。
そこに、他の疾病の治療には見られないアルコール依存の治療の難しさが伏在しているのだろう。
アルコール依存てホンマに厄介な病気だなあと思う。
なお、私は上の記事をアルコール依存と知りながらそれに見合った治療をしない医者を非難するために書いたのではない。私は幸いにして、まだアルコール依存の治療で医者につながったことはないが、なるほど、医療現場にはそういう実態もあるのかと知ったので書き記したまでである。
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