断酒93日目 アルコール依存の再発
昨日、断酒92日達成。たかが92日、されど92日。1日断酒あるのみ。
断酒100日の姿がすぐそこに見えてきた。100日断酒すれば、この日記の冒頭に、こんな堅苦しい断酒日の表記はやめようと思っていたが、それがどうやら実現しそうな気配だ。
100日目からのこのブログはどんな書き出しにしよう。これからじっくり考えることにする。
アルコール依存症の特徴のひとつである否認について調べていて、特定非営利法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)の関連組織である(株)アスク・ヒューマン・ケアの研修相談室長、水澤都加佐さんの「アルコール依存症・再発防止と否認のメカニズム」と題した講演録を見つめた(→参照)。
この講演は、アルコール依存症の否認とその回復について述べられていて、大変示唆に富む内容である。
最後に、薬害依存についてこんな話をされていて、考えさせられるものがあった。
引用しよう。
最後に、おとぎ話を聞いてください。
20年か30年前に、ある男性がアルコールさんと結婚したのです。中学生か高校生の時にアルコールさんと出会ったのですが、彼女は綺麗でした。スタイルも良くて、抜群のプロポーションだった。一目ぼれしたのです。20歳前後には、この女性と一緒に住めるようになった。毎日一緒に居たくなって、ついにアルコールさんと結婚した。
15年ぐらいはうまくやってきた。15年か20年ぐらいは蜜月でした。家に帰れば彼女が待っていてくれたし、いつも良い気分にしてくれました。仕事には張り合いがあったし、彼女といることで何の支障もなかった。
ところが、20年か25年経った時に彼女の毒気に当てられるようになってきた。ついに、彼女と離婚しなきゃならなくなりました。彼女と出会って30年後に、ついにアルコールさんと離婚したのです。
離婚した後というのは、非常に寂しい。例え何の理由であれ、家庭というものが崩壊するわけですから、「あんなやつ」と思っていても離婚というのは寂しいものです。何か大きなものを失った。心にぽっかり大きな穴が空く。このぽっかり空いた穴を何かで埋めたいと思う。問題は何で埋めるかです。何で埋めましょうか。食べることで埋めますか?買い物で埋めますか?処方薬で埋めますか?パチンコで埋めますか?とにかく何かで埋めたくなる。
そして、この埋めたものとしばらくハネムーン期が続く。ただ、今度はアルコールさんのときのように20年も25年も続かない。何年くらい続くかというと、せいぜい1年か2年なのです。そしてまた、パチンコさんや処方薬さんとも離婚しなければならなくなる。そうするとまた寂しさと虚しさが戻ってきます。それをまた何かで埋めたくなる。
今度は何で埋めましょうか?この前は処方薬で失敗したから、もう薬はやめましょう。では、今度は仕事で埋めましょう。徹底的に仕事をしまくることで自分の寂しさ虚しさを埋めていく。今度は、過労死寸前になって倒れてしまう。アルコールが原因ではないけれど、肝臓が悪くなる。血圧があがる。そこで、仕事もほどほどにしないといけなくなる。あるいは、会社をやめなければならなくなる。ついに働き中毒さんとも離婚です。
さて、そうやって考えてくると、この人の人生の中で一番長い間良い思いをさせてくれて、ハネムーン期が長かった人は誰でしょう?
実は、アルコールさんなのです。「ああ、やっぱり私はアルコールさんに会いたい」。かつての彼女のささやきが、本当に竪琴のように聞こえてくるわけです。彼女との10年、15年の生活は何とも言えない蜜月だったわけですから。そこでまた、アルコールに戻っていくわけです。
これが危ない再発のプロセスです。だから酒をやめた後の寂しさとか虚しさとか不安感を、そう簡単に他のもので埋めてはいけない。もし埋めるとしたら、危なくないもので埋めてほしい。
本当に必要な薬はなにかは医師の診断にかかっています。そして、薬を出す場合はそれを出すしかないのか、出した後、その人がどうなったのか、回復にプラスになっているのかマイナスになっているのかということを、出す側もきちんとモニターしてほしいですね。
出しっぱなしでは困るんです。病院によっては「今日は何の薬がほしいの?」なんていきなり言われるようです。患者さんと会わないで、すぐ希望どおりの薬がもらえる病院が1番良い病院だと思ってしまうのです。電話すれば薬が出てくるということは、絶対やめてほしいです。
自分の回復には自分で責任を持つことです。そして、自分の再発の防止にも基本的には自分で責任を持って仲間のところへ行くことです。
■ 断酒とノンアルコール飲料
私が講演のこの部分を引用したのは、読みながらノンアルコール飲料のことを考えたからである。
飲酒していた当時、何度かノンアルコールビールを飲む機会があったが、口にするたび、「こんなまずいもん飲めるか」と思っていた。
断酒を始めた当時も同じ思いだった。2度、3度、口につけたが、「こんなマズいんは飲めん」と思った。
ところが、断酒1ヶ月ぐらいしてあらためてノンアルコールビールを口にすると、「意外とイケルやん」と思うようになった。
キンキンに冷やして飲んでみると、普通のビールと同じ味がした。
それからというもの、私は毎日のようにノンアルコールビールを飲むようになった。たいがいは350ml2本ほどだが、多いときには4本飲むこともある。
飲んでいると、酔わないだけで、他は飲酒時と似たような感覚を味わうことができる。そうである。私は今でも、飲酒時の記憶をそのまま消すことなく持続させているのである。
これってどうなんだろうと思う。やばいのではないかと思う。以前、そんな思いをこのブログに書き込んだとき(→参照)、私のこのブログにときどきコメントを寄せてくれているぽんたさから、こんなコメントがあった。
私の相談させていただいている病院では これを飲みながらでも、本物に手が出ないということを評価されています。
どんな形であっても、アルコールを取らない選択。それが大切なのではないでしょうか・・・。
もし、それが危険だと感じたら手放すことは必要ですけど。太郎さんがそれを飲むことで、満足されているのであれば可、そうでなくて飲酒欲求が出るのであれば不可。
ノンアルコールを飲んでいることで太郎さんがアルコールから遠ざかっているのであれば、悪いと思う必要もないかと思うのです。
どんな形、手段であっても、アルコールという薬物を摂取していないことが、太郎さんの体を守っているのです。
人それぞれ、断酒の方法があると思います。全ての人に共通ではない。だから、ご自身の選択を否定しないで下さいね。
そのときはご指摘のとおりだなあと思い、そんなに気にすることでもないか。なにせ、それでアルコールがとまってるんやからと考えることにした。
基本的には、今でもその考えに変わりはないのだが、上の講演を読んで、アルコール依存に変わる代替物依存について(私の場合はノンアルコールだが)考えさせられたのである。
■ 禁酒婦人
アルコール依存に変わるドラッグ依存で私が思い出すのは、ブログ「禁酒婦人」である。
このブログは、断酒3年近くになったハンドルネーム「cold7」さんが毎日の日常を綴ったブログで、その中には旦那の生態が克明に、しかも正直に綴られていて、私は読むのを楽しみにしている。
私のブログはその存在を嫁さんに内緒にしているが、cold7さんの旦那さんは、禁酒夫人ブログの存在をご存知なのだろうか。ご存知ならばなんとも鷹揚な旦那さんやなあなどと思いながら、ときにわが身に引き比べて苦笑を禁じえないときもある。
読んでいると、cold7さんが毎日飲まれている安定剤や抗うつ剤、はては風邪薬、デパート違ったデパス、プレスリーいや違ったマイスリー、レキシントンいやいや違ったレキソタン、パルテノンいや違ったハルシオン、パンシロンいや違ったパブロンなどの名前が頻繁にでてくる。
しかも、飲まれている錠剤の数が半端ではない。
断酒の次は、なんとか、これらの薬からも抜け出さなくては・・・と思いながらも止められない苛立ちと焦りが、文面の中に見え隠れしていることも多い。
断酒会に出席したとき、アルコール専門病院に入院中の患者さんが、体験談で不眠の辛さを訴えられ、無事、退院してもアルコールがなければこの不眠の辛さには耐えられそうもないとさめざめと泣かれたことがあった。
私はアルコール依存症には違いないが、まだ抗酒剤も安定剤も睡眠導入剤も服用したことがない。そういう意味ではいわば幸せな人間なので、薬を飲まずにはいられない人の気持ちは想像するしかないが、ブログの文面では明るく振舞おうとされているcold7さんも、さぞ辛かろうと思う。
1日も早くドラッグからも遠のくことができるよう健闘をお祈りしたいなどと、ありきたりのことしかいえないが、上の講演の記事を読みながら、人知れず、私はcold7さんの心情に思いを馳せたのだった。
きっと、アルコールの代替として薬に依存するようになっている人も多いことだろうと思う。
それでも、まだ、アルコール依存よりはましということかもしれないが、どこかでその連鎖を断ち切ってほしいと願う。
まあ、これは言うは易し、行うは難しの典型的事例かもしれないね。
今日は、(株)アスク・ヒューマン・ケアの研修相談室長、水澤都加佐さんの「アルコール依存症・再発防止と否認のメカニズム」と題した講演録を読んだ感想をとりとめもなく書いてしまいました。
結論は何もありません。
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