断酒94日目 アルコール依存症スクリーニングテスト
■ 今日(2月8日(金)は断酒94日目
昨日、断酒93日達成。たかが93日、されど93日。1日断酒あるのみ。
1 スクリーニングテストのいろいろ
前回は、アルコール依存症がどんな病気であるかについて考えてきました(→参照)。
アルコール依存症は、たとえば胃潰瘍とか心臓病とかのように、体のどこか悪い部位の状態(病理学的所見)だけではなく、これに加えてアルコールを飲み出したらとまらないとか内臓が悪いとわかっているのに飲み続けるといった、アルコールに対するその人の態度など(臨床学的所見)を総合して判断することになります。
では、具体的にどのような病理学的、臨床学的所見がみられるときにアルコール依存症と診断されるのでしょうか。
最終的に、アルコール依存症かどうかを診断するのはお医者さんですが、その判断材料の1つとして活用されるものに依存症のスクリーニングテストがあります。
これは依存症になっているのではないかと考える本人や家族などが、いくつかの設問に答えることによって、アルコールへの依存度合いを判断しようとするものです。
あくまで、アルコール依存に陥っていないかどうか、本人や家族が調べてみるために使用するもので、これがアルコール依存症の確定診断になるわけではありません。
お医者さんは、このスクリーニングテストの結果や病理学的所見などを参考にしながら、全体的総合的な見地から、最終的に依存症かどうかを判断することになります。
では、そのスクリーニングテストにはどんなものがあるのでしょうか。
現在、よく活用されているテストは次の3つです。
2 久里浜式アルコール症スクリーニングテスト(KAST式)
久里浜式アルコール症スクリーニングテストは、国立で唯一のアルコール依存症専門病院、「独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター」において、1978年にわが国で最初に作られたスクリーニングテストです。
このテストは、当時、首都圏の一般人口を対象とした調査をもとに作られましたが、2003年に全国の一般人口からの回答とアルコール依存症で初回入院した患者を対象とした結果から大幅に改訂されました。
以下、最初に作られたテストを旧テスト、改訂されたテストを新テストと呼んで説明しましょう。なお、両方のテストいずれも、最近6ヶ月間の身体状況等について回答する内容になっています。
◇ 旧テスト(→旧テスト)
「酒が原因で大切な人(家族や友人)との人間関係にひびが入ったことがありますか(あるー3.7点、ないーマイナス1.1点)から始まる14項目の質問に答えて総合点を出し、その点数結果からアルコール依存度合いを判断します。
◇ 新テスト(→新テスト)
「食事は1日3回、ほぼ規則的にとっている(はい0点、いいえ1点)からはじまる10項目の質問に答えて総合点数を出し、その点数結果からアルコール依存度合いを判断します。
男性と女性バージョンに別れています。
新バージョンは、旧バージョン作成から25年を経て、それまでに積み重ねられてきた治療実績や知見に基づいて改訂が行われたものなので、今日では、新バージョンの方がより広く活用されているといえそうです。
内容的にいえば、旧バージョンでは各々の質問項目に重み付け(3.7点とか2.3点といった点数配分)がされていましたが、この方式が診断に正確に反映できるシステムとなっているか、果たして合理的かといった疑問がだされていて、新バージョンではこの重み付けを廃しています。また、質問項目も14項目から10項目に減らし質問内容もよりシンプルなものになっています。
テストを試みる本人や家族からすれば、質問項目数にしても質問内容にしても、新バージョンの方が答えやすいといっていいでしょう。
注意しておきたいことは、ネットを見ていると、まだ結構旧バージョンを掲載しているサイトが多く見られることです。
別に旧バージョンで回答したからといって、新バージョンと異なる結果が出ることはそう多くはないでしょうが、できることなら新バージョンのテストで依存度合いを判断したいものです。
3 CAGE式テスト(→テスト内容)
イギリスで生れたアルコール依存診断テストです。次の4項目に答えて2項目以上当てはまれば、アルコール依存症の可能性が高いといわれています。
KAST方式が診断の対象期間を過去6ヶ月間の状況に絞っているのに対して、CAGE方式は、調査時点までの半生を対象期間としています。
印象として、4つの質問に答えて2つ以上当てはまれば依存症の疑いありというのは、やや乱暴な気がしないでもありませんが、質問も判断も極めてシンプルな点が、これまでこの方式が広く使われてきた最も大きな理由なのかもしれません。
4 AUDIT(→テスト内容)
AUDITは、6カ国(ノルウェー、オーストラリア、ケニア、ブルガリア、メキシコ、アメリカ)の調査研究に基づいて作成されたスクリーニングテストです。
世界的に使用されているアルコール関連問題の重症度を測定する検査で、人種や性別による差が少ないといわれています。
AUDITは10項目の質問に回答する方式になっていて、質問1~3で現在の飲酒量や飲酒頻度を確認し、質問4~10で過去1年間に生じた飲酒に関連した問題の有無をチェックし、各質問の点数を合計します。
KASTやCAGE方式が、アルコール依存症に該当するかどうかを判断するためのテストであるのに対して、依存症の判断だけではなくて、将来的に飲酒問題が進行する危険のある飲酒者であるかどうかも判断しとうという目的をもっている点が特徴になっています。
どの点数にあれば問題飲酒といえるかは、国や地域において異なりますが、わが国においては8~10点以上で何からの問題飲酒が指摘され、15点以上でアルコール依存症が疑われるとされています。
5 それぞれのテストの評価
KAST方式、CAGE式テスト、AUDIT、いずれのスクリーニングテストが、アルコール依存症の判断にとって優位性があるかはよくわかっていません。
例えば、ハンドルネーム「yamadagaga」さんは、そのブログ「yamadagagaのブログ」の中で、「”KAST(久里浜式アルコール依存テスト"または”KASTⅡ” が有名ですが、これは、中島らも氏いわく、『これじゃあ誰でもアルコール依存症だ』 と。私もそう思います。テストそのものが、医療機関の考案したものであり、それなりの思い入れ、策があるでしょう。」と述べて、AUDIT方式を支持されています。
どちらにしても最初に述べたように、これらのテストは、アルコール依存症を疑う1つの大きな指標であるには違いありませんが、このそれぞれのテストの結果だけでアルコール依存症だと診断されるわけではありません。
いい加減な言い方になりますが、まずは自分に答えやすそうなテストで試してみるというのが1番いいのではないでしょうか。
6 お医者さんによるアルコール依存症の確定診断(ICD-10)
上に述べてきたのは、アルコール依存症が疑われるときに、本人やその家族が行うテストですが、お医者さんがアルコール依存症の確定診断を行う際に用いられるICD-10と呼ばれるチェック法があります。
これは、WHO(世界保健機関)が作成したもので、1~6の大チェック項目があり、この大チャック項目のそれぞれに、数項目から十数項目の詳細チャック項目がぶら下がっていて、これらをチェックして一定の数値を超えれば、アルコール依存症と診断しようというものです(→ICD-10の内容)。
お医者さんは、これらの項目にしたがって、患者さんに質問を投げかけ、最終的に依存症かどうかの確定診断を下すことになります。
このように、ICD-10はお医者さんの確定診断のためのチェック項目なので、項目数も多く多岐にわたっていますが、患者さん自身でもチェックすることができますので、時間があれば1度試してみるのもいいでしょう。
次回は、他の疾病には見られないアルコール依存症特有な「否認」について考えていきたいと思います。
(毎日かあさん」「ぼくんち」などでおなじみの漫画家西原理恵子さんの元夫で写真家の鴨志田穣さんは、42歳という若さで腎臓癌で死んだ。鴨志田さんは、腎臓癌が見つかる前、アルコール依存症を病んでいた。西原さんは「早く見捨てていればそれだけ回復も早かったかもしれない」と書かれている。アルコール依存症者だけでなく、是非、その家族にも読んで欲しい本。)
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昨日、断酒93日達成。たかが93日、されど93日。1日断酒あるのみ。
前回は、アルコール依存症がどんな病気であるかについて考えてきました(→参照)。
アルコール依存症は、たとえば胃潰瘍とか心臓病とかのように、体のどこか悪い部位の状態(病理学的所見)だけではなく、これに加えてアルコールを飲み出したらとまらないとか内臓が悪いとわかっているのに飲み続けるといった、アルコールに対するその人の態度など(臨床学的所見)を総合して判断することになります。
では、具体的にどのような病理学的、臨床学的所見がみられるときにアルコール依存症と診断されるのでしょうか。
最終的に、アルコール依存症かどうかを診断するのはお医者さんですが、その判断材料の1つとして活用されるものに依存症のスクリーニングテストがあります。
これは依存症になっているのではないかと考える本人や家族などが、いくつかの設問に答えることによって、アルコールへの依存度合いを判断しようとするものです。
あくまで、アルコール依存に陥っていないかどうか、本人や家族が調べてみるために使用するもので、これがアルコール依存症の確定診断になるわけではありません。
お医者さんは、このスクリーニングテストの結果や病理学的所見などを参考にしながら、全体的総合的な見地から、最終的に依存症かどうかを判断することになります。
では、そのスクリーニングテストにはどんなものがあるのでしょうか。
現在、よく活用されているテストは次の3つです。
以下に各々のテストの内容を見ていきましょう。○ 久里浜式アルコール症スクリーニングテスト(KAST式)
○ CAGE式テスト
○ AUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)
2 久里浜式アルコール症スクリーニングテスト(KAST式)
久里浜式アルコール症スクリーニングテストは、国立で唯一のアルコール依存症専門病院、「独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター」において、1978年にわが国で最初に作られたスクリーニングテストです。
このテストは、当時、首都圏の一般人口を対象とした調査をもとに作られましたが、2003年に全国の一般人口からの回答とアルコール依存症で初回入院した患者を対象とした結果から大幅に改訂されました。
以下、最初に作られたテストを旧テスト、改訂されたテストを新テストと呼んで説明しましょう。なお、両方のテストいずれも、最近6ヶ月間の身体状況等について回答する内容になっています。
◇ 旧テスト(→旧テスト)
「酒が原因で大切な人(家族や友人)との人間関係にひびが入ったことがありますか(あるー3.7点、ないーマイナス1.1点)から始まる14項目の質問に答えて総合点を出し、その点数結果からアルコール依存度合いを判断します。
◇ 新テスト(→新テスト)
「食事は1日3回、ほぼ規則的にとっている(はい0点、いいえ1点)からはじまる10項目の質問に答えて総合点数を出し、その点数結果からアルコール依存度合いを判断します。
男性と女性バージョンに別れています。
新バージョンは、旧バージョン作成から25年を経て、それまでに積み重ねられてきた治療実績や知見に基づいて改訂が行われたものなので、今日では、新バージョンの方がより広く活用されているといえそうです。
内容的にいえば、旧バージョンでは各々の質問項目に重み付け(3.7点とか2.3点といった点数配分)がされていましたが、この方式が診断に正確に反映できるシステムとなっているか、果たして合理的かといった疑問がだされていて、新バージョンではこの重み付けを廃しています。また、質問項目も14項目から10項目に減らし質問内容もよりシンプルなものになっています。
テストを試みる本人や家族からすれば、質問項目数にしても質問内容にしても、新バージョンの方が答えやすいといっていいでしょう。
注意しておきたいことは、ネットを見ていると、まだ結構旧バージョンを掲載しているサイトが多く見られることです。
別に旧バージョンで回答したからといって、新バージョンと異なる結果が出ることはそう多くはないでしょうが、できることなら新バージョンのテストで依存度合いを判断したいものです。
3 CAGE式テスト(→テスト内容)
イギリスで生れたアルコール依存診断テストです。次の4項目に答えて2項目以上当てはまれば、アルコール依存症の可能性が高いといわれています。
KAST方式が診断の対象期間を過去6ヶ月間の状況に絞っているのに対して、CAGE方式は、調査時点までの半生を対象期間としています。
印象として、4つの質問に答えて2つ以上当てはまれば依存症の疑いありというのは、やや乱暴な気がしないでもありませんが、質問も判断も極めてシンプルな点が、これまでこの方式が広く使われてきた最も大きな理由なのかもしれません。
4 AUDIT(→テスト内容)
AUDITは、6カ国(ノルウェー、オーストラリア、ケニア、ブルガリア、メキシコ、アメリカ)の調査研究に基づいて作成されたスクリーニングテストです。
世界的に使用されているアルコール関連問題の重症度を測定する検査で、人種や性別による差が少ないといわれています。
AUDITは10項目の質問に回答する方式になっていて、質問1~3で現在の飲酒量や飲酒頻度を確認し、質問4~10で過去1年間に生じた飲酒に関連した問題の有無をチェックし、各質問の点数を合計します。
KASTやCAGE方式が、アルコール依存症に該当するかどうかを判断するためのテストであるのに対して、依存症の判断だけではなくて、将来的に飲酒問題が進行する危険のある飲酒者であるかどうかも判断しとうという目的をもっている点が特徴になっています。
どの点数にあれば問題飲酒といえるかは、国や地域において異なりますが、わが国においては8~10点以上で何からの問題飲酒が指摘され、15点以上でアルコール依存症が疑われるとされています。
5 それぞれのテストの評価
KAST方式、CAGE式テスト、AUDIT、いずれのスクリーニングテストが、アルコール依存症の判断にとって優位性があるかはよくわかっていません。
例えば、ハンドルネーム「yamadagaga」さんは、そのブログ「yamadagagaのブログ」の中で、「”KAST(久里浜式アルコール依存テスト"または”KASTⅡ” が有名ですが、これは、中島らも氏いわく、『これじゃあ誰でもアルコール依存症だ』 と。私もそう思います。テストそのものが、医療機関の考案したものであり、それなりの思い入れ、策があるでしょう。」と述べて、AUDIT方式を支持されています。
どちらにしても最初に述べたように、これらのテストは、アルコール依存症を疑う1つの大きな指標であるには違いありませんが、このそれぞれのテストの結果だけでアルコール依存症だと診断されるわけではありません。
いい加減な言い方になりますが、まずは自分に答えやすそうなテストで試してみるというのが1番いいのではないでしょうか。
6 お医者さんによるアルコール依存症の確定診断(ICD-10)
上に述べてきたのは、アルコール依存症が疑われるときに、本人やその家族が行うテストですが、お医者さんがアルコール依存症の確定診断を行う際に用いられるICD-10と呼ばれるチェック法があります。
これは、WHO(世界保健機関)が作成したもので、1~6の大チェック項目があり、この大チャック項目のそれぞれに、数項目から十数項目の詳細チャック項目がぶら下がっていて、これらをチェックして一定の数値を超えれば、アルコール依存症と診断しようというものです(→ICD-10の内容)。
お医者さんは、これらの項目にしたがって、患者さんに質問を投げかけ、最終的に依存症かどうかの確定診断を下すことになります。
このように、ICD-10はお医者さんの確定診断のためのチェック項目なので、項目数も多く多岐にわたっていますが、患者さん自身でもチェックすることができますので、時間があれば1度試してみるのもいいでしょう。
ポイント
○ アルコール依存症にかかっているかどうかの判断基準に3つのスクリーニングテスト(KAST、CAGE、AUDIT)がある。
○ どのテストに優位性があるかは必ずしも明らかではないので、自分にできるテストを試みればよい。
○ スクリーニングテストの結果はアルコール依存症の確定診断ではない。
○ お医者さんの確定診断の指標となるICD-10を試みるのもよい。
次回は、他の疾病には見られないアルコール依存症特有な「否認」について考えていきたいと思います。
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