否認再び
それは、ちょうどsyousukeさんが「否認」についてブログにアップされたときと前後したので、何度もsyousukeさんの記事を読みなおしながらその考えに納得し、いわば、私の場合は、その考えを教科書的に敷衍するようなつもりで書いたのでした。
アルコール依存症という病気を認めて酒を手放しても、酒に頼らなければ生きていけなかった本来の心の病を放っておいて本当の回復はない。自分勝手なわがまま気ままな生き方自体、病んだ精神の成せる業。その根っこの病を認めないこと、これを第二の否認と呼んでいます。
アルコール依存症、酒を止めるだけでも大変なことなのに、まだそれ以上に取り組まなければならない問題山積みの心の病です。
一方、その後、棚の上さんも2回にわたって「第2の否認」について取り上げられ、かなりきつい調子で、このsyousukeさんの考えを批判されています。
該当部分を無断で引用させていただきます。こうあります。
「第二の否認」として「酒をのまないでは生きていられなかった理由と向き合うべき」と言う人がいるが、例えば生い立ちや生活苦などが原因だとして、それと向き合ってみてどうなるというのか。
原因・理由を過去に遡って取り除くことはできないから、それを乗り越え、克服することだということになるのだろうが、それはまた別の問題であろう。
その原因なるものの故に「酒を飲まないでは生きられなかった」という考え方に間違い(もっとはっきり言えば「甘え」)があるように思えてならない。
■ 断酒会のいう「第2の否認」とその解除
ところで、「第2の否認」という言葉。これはsyousukeさん流に書くなら、アルコール依存の「業界」用語です。アルコール依存「業界」で、それも「断酒会」という自助組織でのみ通用する言葉です。
私も断酒会に入会するまでは、このような言葉を知りませんでした。ましてや、「第2の否認の解除」という言葉にいたっては、はて、なんのことやらさっぱりという感じでした。
第2の否認の解除とは、第2の否認の克服の意味ですが、今でも、なぜ解除などという言葉をわざわざ使おうとするのか私にはわかりません。何か、事柄を難しく難しく表現しようとしているようにさえ思えます。
■ 断酒新生指針
それはともかく、第2の否認です。これは断酒会の「断酒新生指針」と深く関わっています。
断酒新生指針はこうです。
1 酒に対して無力であり自分一人の力ではどうにもならなかったことを認める。
2 断酒例会に出席し自分を素直に語る。
3 酒害体験を掘り起こし、過去の過ちを素直に認める。
4 お互いの人格に触れ合い、心の結びつきが断酒を可能にすることを認め、仲間たちとの信頼関係を深める。
5 自分を改革する努力をし新しい人生を創る。
6 家族はもとより、迷惑をかけた人たちに償いをする。
7 断酒の歓びを酒害に悩む人たちに伝える。
この指針の4番以下を実践することを、断酒会では「第2の否認の解除」といっているわけです。
つまりは、断酒するだけでなく、飲酒をしていた頃の自分の生きかたをあらためて、新しい人生を創り、これまで迷惑をかけてきた家族や近親者、友人などに償うとともに、断酒する歓びを人々に伝えていくことこそが大切だというのです。
そのことに思いいたらず、断酒さえ実践すればもう何も問題はないという考えは、自身がアルコール依存症だったことを否認することにつながると考えるのです。
■ ちょっと極端な例だが
ちょっと極端な例で考えてみます。家庭的にも社会的にも人格的にも立派に生きている人がいて、毎日、家の帰ると一人静かに酒を飲み、そのうちアルコール依存に陥ったとします。
それでもその人は、依然として家庭的にも社会的にも人格的にも立派な生き方を続けているという場合、その人には、断酒会のいうところの第2の否認の問題は起こってきません。酒さえやめればいいだけです。
まあ、そんな稀有な人がいてるかどうか。大抵はアルコール依存に陥れば、家庭や近親者を苦しめ、勤め先にも迷惑をかけ、自身も苦しみながら、それでもアルコールから離れることができません。断酒会に入会するまでにいたった人は、大概がそのような過程を経ているのだと思います。
だからこそ、断酒するだけではいけないのです。断酒が自身にしっかりと根付くまではそれだけでもいいかもしれないけれど、それ以降は断酒を継続するだけでなく、新しい生き方を生きることで、過去を償い、その経験を社会に役立てていかなければならないというのです。
断酒会が「第2の否認」という場合、その否認の内容は、アルコール依存に陥って、家庭や近親者、友人を苦しめ、果ては社会に害悪をも及ぼしてきたことです。
そのことを思いいたらず、酒さえやめればそれでいいというのでは、本当の断酒をしたことにはならない、すなわちアルコール依存であることを否認しているというのです。
これが、アルコール依存「業界」でいう、アルコール依存の第2の否認とその解除の意味だと思います。
上に掲げたsyousukeさんの第2の否認の説明は、syousukeさん独特の言い回しで書かれていますが、根っこの考え方は断酒会のいう第2の否認を踏まえてのことだと思います。
が、そのような言い回しがやや誤解を生んでいるのかも知れないとも思います。
棚の上さんが、「断酒後のスリップ(=再飲酒)の要因までをも「否認」(いうところの「第2の否認であっても」とすることには若干違和感がある」と書かれているのも、多分、syousukeさんのそんな言い回しにあるのではないか、そんな気がします。
断酒会もsyousukeさんも、断酒後のスリップと第2の否認を直接結び付けて考えてはいないと思います。
本当の意味での断酒をするためには、酒をやめればいいという考えだけでは不十分だ、それは本当の回復にはつながらないといっているのだと思います。
もちろん、第2の否認を続けていれば、それがスリップにつながる可能性はおおいにありうると思いますが・・・。
■ 議論は噛み合っているだろうか。
ここまで書いて、再度、棚の上さんの反論を読んで思ったのですが、ひょっとしてこの議論は噛み合っていないのかもしれません。
先にも書いたように、第2の否認とはアルコール依存「業界」だけに通じる専門用語です。その意味するところが一般社会の中で広く承認されているわけではありません。
そういう限定された「業界」用語の意味するところは上に書いたようなことだと私は思っていますが、そこに議論が噛み合っていないと感じる理由があるのかもしれません。
よくわからなくなりました。すみません。断酒ブログ村の住人のどなたかの意見もお聞きしたいですね。
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